1. いま聞きたいQ&A

この記事は2020年1月16日に更新されていますので、こちらをご参照ください。

日米欧の金融政策について、最新動向と今後の見通しを教えてください。
(2020年1月16日)
Q

日米の金融政策について、現状と課題を教えてください。

ゼロ金利下でさらなる金融緩和を実現する

国がおこなう景気対策には大きく分けて、公共投資や減税などの「財政政策」と、金利調整(利下げ)などの「金融政策」という2つの方法があります。それぞれを決定・実施するのは、前者が政府、後者が中央銀行です。

後者の金融政策について先ごろ、日米で異例とも言える大きな動きがありました。まず2008年12月16日、米国の中央銀行にあたるFRB(米連邦準備理事会)が、政策金利の誘導目標を従来の1.0%から「0~0.25%」へ引き下げました。これによって米国は事実上、史上初のゼロ金利へ突入したことになります。

FRBは同時に史上初の「量的緩和政策」も打ち出しました。量的緩和とは、中央銀行が金融緩和の達成目標を「金利」ではなく「市場に供給する資金量」に設定すること。ゼロ金利になると、政策金利をそれ以上低下させることができなくなりますが、そのような場合でも、中央銀行が市場への資金供給量を増やすことで銀行などに投融資の拡大を促し、実質的な金融緩和の効果を狙うというものです。

FRBは量的緩和の具体策として、(1)政府機関債や住宅ローン担保証券の購入(2)長期国債の購入(3)消費者ローンおよび中小企業向けローンを裏付けとする資産担保証券と引き換えに資金供給--などの方法を挙げています。日本でもかつてゼロ金利のもと、日銀が2001年3月から2006年7月にわたって世界初の量的緩和を実施しました。今回のFRBによる量的緩和は、銀行による投融資の拡大よりむしろ市場への直接的な資金供給を重視している点で、日銀のケースからさらに一歩踏み込んだものとなっています。

日銀が過去に実施した量的緩和は、民間銀行が日銀に開設している当座預金口座の残高目標を設定し、国債などを銀行から買い取ることで、その当座預金に資金を大量供給するというものでした。銀行は準備預金制度にもとづいて、預金総額のうち一定の割合を日銀の当座預金に預け入れることが義務づけられています。当座預金は金利がつかないため、残高が制度上必要な金額を上回った場合、銀行にとっては利息を生まない「ムダ金」が増えることになります。銀行がこうしたお金を企業への融資などにまわし、景気を刺激することが期待されましたが、その効果は限定的なものに終わりました。

FRBの量的緩和も、基本的に銀行が保有する資産を購入して資金供給するという点では日銀のケースと同じです。ただし、とくに低迷が著しい住宅ローン市場や自動車ローン市場のテコ入れを狙って、これらに関連する証券化商品を重点的に購入するうえ、資金供給の対象として当該市場のシェアが大きいノンバンクも加える意向を示しています。

日米ともに中央銀行がリスクを抱えた

即効性を重視したFRBの決断は、市場においておおむね評価されている模様です。しかし一方では、その副作用に対する懸念も否めません。いわゆる不良資産をFRBが大量に購入して抱え込むことは、健全性が求められる中央銀行が自ら大きなリスクを背負うことを意味します。ただでさえゼロ金利でドル安への圧力が働いているうえに、もしも中央銀行の財務が悪化するようなことになれば、ドルの信用が一気に低下する恐れもあります。

同じ懸念は、実は日本にもあてはまります。日銀は2008年12月19日、政策金利を従来の0.3%から0.1%へ引き下げるとともに、銀行からの長期国債の買い取りを増額し、企業のコマーシャルペーパー(CP)を直接買い取る方針を発表しました。CPとは、企業が運転資金などを調達するため、おもに銀行向けに発行する約束手形のこと。日銀はこれまでも資金供給の一環としてCPを銀行から購入していますが、そこには将来売り戻す条件がついており、いわばCPを担保として受け取っているかたちです。今後は銀行が持つCPを買い切ることになるため、CPを発行した企業が経営破綻した場合には、日銀がその損失を負うことになります。

日銀の白川総裁はCP買い取りについて、量的緩和の復活という見方は否定しています。しかしながら、これはあくまでも「言葉の問題」ではないでしょうか。政策金利が限りなくゼロに近づいた以上、金利調節による金融緩和には限界があるわけで、今後さらなる景気対策が必要になった場合には、現実問題として資金供給量に重点をおいた政策を選択せざるを得ないでしょう。

景気後退や金融不安が深刻化するなかで、日米ともに中央銀行の金融政策は過去に類を見ない、未踏の領域に入りつつあると言えそうです。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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