1. いま聞きたいQ&A
Q

政府紙幣という言葉を耳にしますが、何のことですか?

私たちが普段手にするお札は、日本銀行が発行しています。このお札は、日本銀行が民間金融機関から債券などを買い入れて供給する(公開市場操作)、貸し出す(日銀貸出金)などの行為を通じて、世の中に流通します(Q&A「日銀の量的緩和政策」参照)。つまり、お札は日本銀行から何らかの形で供給されないと、政府であっても勝手に発行してはいけない仕組みになっています。

そのため、政府は様々な政策(公共投資や社会保障など)にかかる費用が、税金などの収入を上回る場合(最近はそれが常態化していますが)、国債を発行し、民間金融機関などに買い取ってもらっています。
最近、長引く不況などを反映してこの国債発行額が巨額になっています。現在はカネあまり、運用難、デフレの状況なので、巨額の国債を民間金融機関や個人が積極的に購入してくれていますが、そのうち政府の借金返済能力に対する疑念が出て、買い手がいなくなってしまうのではないかと心配する専門家も少なくありません(Q&A「国債発行残高の急増」参照)。

そこで、政府自身が紙幣を発行したらどうかというアイデアを、ノーベル経済学賞受賞者、スティグリッツ米コロンビア大学教授が提案し、注目されています。政府自身が紙幣を発行すれば、国債すなわち政府の借金がこれ以上増えることはないというわけです。

そのアイデアによると、政府紙幣は政府が発行するお札で、いま出回っているお札(日銀券)と同じ機能を持たせようとしています。日銀券と一対一の交換を保証します。紙幣発行で得たおカネは、減税など国内の需要を喚起することに使ったり、不良債権処理のために使います。日本経済は需要が不足しており、それが、物価が継続的に下落するというデフレにつながるという問題を抱えていますが、この対策にもなるというわけです。

私たちの生活面では、政府紙幣といままでのお札(日銀券)が混在するという面倒くささはありますが、両方とも同じ価値で使えるので直接的な影響はありません。

ただし、政府紙幣の発行は危険も伴います。いくら借金にならないといっても、おカネが足りないからといって、政府が紙幣をむやみに発行すれば国民がそれを持つことに不安を感じるようになります。そもそも紙幣は紙切れに過ぎませんので、「信用」がなくなるとあっという間に価値がなくなります。発展途上国などで人々がその国の通貨より、米ドルを持ちたがるという傾向があるのがいい例です。

通貨の価値がなくなるということは、物価の上昇、インフレを意味します。 それも普通のインフレではなく、ハイパーインフレになりかねません。いくらデフレが困るといってもいきなりハイパーインフレになってしまったら、多くの人々が生活に困ることになるでしょう。そもそも、日本銀行が政府と独立した立場として存在するのは、そうしたむやみな紙幣発行に歯止めをかけるためなのです。

そのため、提唱者の一人である榊原英資・慶応大学教授は「一回限りということを政治レベルで明確に確認する必要がある」と語っています。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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