「日銀当座預金の残高を増加させ資金を潤沢に供給する」という政策が打たれるのは日銀が民間金融機関の日銀当座預金を何らかの方法で増やしてあげれば、世の中に流通するおカネを増やすことができるためです。
民間金融機関と日銀の関係からまず説明しましょう。
民間金融機関は準備預金制度という仕組みによって、預金総額の一定割合(法定準備率といいます)を日銀に無利子で預け入れなければなりません。これが日銀当座預金です。
金融機関は通常、預金などで集めたおカネを企業や個人に貸し出したり、債券や株式など有価証券に投資して、預金に対して支払う利息以上のおカネを生み出すことにより、収益を挙げています。
日銀当座預金も金融機関にとっては貸し出しや有価証券などと同じ資産となります。
貸し出しや有価証券はリスクがあり、元本すら戻ってこないことがあります(いわゆる不良債権問題や企業の倒産、株価下落など)。一方、日銀当座預金は安全ですが、利子は生みません。
こうした状況で、各金融機関が準備預金制度上預けるべき金額を超えて日銀当座預金が増えるとどうなるでしょうか。
金融機関にとっては、資産全体は膨らみますが、利益を生まない資産が増えるだけなので、資産の利回りは悪化してしまいます。金融機関は利子を支払う約束のもとに顧客から預金を集めていますので、資産を上手に運用できないことは死活問題です。そこで、必要以上に積まれている日銀当座預金を取り崩して、貸し出しなどリスクを取った運用を増やそうとするので、経済全体に回るおカネの量が増えるという効果(政策当局としてはここが狙いです)が出てくるわけです。
それでは日銀は民間金融機関の日銀当座預金をどうやって増やしたり、減らしたりするのでしょうか。
それには「日銀貸出金」と「公開市場操作」の2つの方法があります。
「日銀貸出金」とはその名の通り、日銀が民間金融機関に資金を貸し出すことです。この貸し出しに使われる金利が「公定歩合」です。貸し出しを増やせば日銀当座預金は増え、減らせば日銀当座預金も減ります。
もう一つの「公開市場操作」とは日銀が優良手形や債券を購入することで資金を供給したり、手形や債券を売却することで資金を引き揚げたりすることです。民間金融機関が手持ちの手形や債券を日銀に売却すれば、金融機関の日銀当座預金が増えることになります。ただ、「買います」「売ります」という日銀の提案に応じるかどうかは民間金融機関の自由です。また、日銀が買い入れる資産も一定以上の基準を満たしていなければなりません。
最近はこの「公開市場操作」による金融調節が一般的です。金融緩和の効果を高めるために、土地、株式など日銀が買い入れる資産の種類を増やすべきという意見が専門家の間からは出てきています。