1. いま聞きたいQ&A
Q

ポートフォリオ(資産構成)の見直しは、本当に必要なのでしょうか?

ポートフォリオにまつわる自己矛盾

金融危機による株安や円高をきっかけに、個人投資家やFP(ファイナンシャルプランナー)のあいだで、ポートフォリオの資産配分比率を見直そうという動きが広がりつつあるようです。特に、いま活発に議論されているのが、株式の保有比率をどうするかという問題です。主な論点をいくつか挙げてみましょう。

【問題点】

  • ●個人投資家にとって、金融危機時のように株式相場の変動率(リスク)が30~40%にも達して資産価値が大きく減少するのは、それがたとえ一時的なものであっても精神的に辛い。
  • ●日経平均株価は現在、25年前とほぼ同じ水準にあり、過去10年間はおおむね1万円~2万円のボックス相場で推移している。すなわち今日の日本株は、単純な長期保有では収益が上がりづらい投資対象となっている。

【対応策】

  • ●いたずらに「株式は長期保有が正しい」という概念に縛られるのではなく、株式を売却するタイミングについても考えるべき。
  • ●具体的には景気の悪化過程など、これから株価が下がる、あるいは不安定に推移すると思われる局面では、ポートフォリオにおける株式への配分比率をいったん下げて、債券などへの配分比率を上げる。

これらの議論は結局のところ、「ポートフォリオにおける株式の取り扱い」を問題視しているわけですが、本当の問題はむしろ、もっと根源的なところにあるような気がします。「ポートフォリオそのものの取り扱い」について、思い違いや矛盾が生じているのではないかと考えられるのです。

前回お話ししたように、将来の株価や金利がどうなるかは誰にも予測がつきません。日経平均株価が過去10年間にわたってボックス相場で推移したからといって、次の10年間も同じ状況が続くかどうかは、本当に誰にもわからないのです。むしろ、だからこそポートフォリオという異なる資産の組み合わせをつくることに、大きな意義があるのだと言うことができます。

ポートフォリオとは、さまざまなかたちの将来に対応できる資産の体勢づくりに他なりません。そのポートフォリオを景気や相場の状況に合わせて機動的に崩したり組み替えたりしながら、より効果的な資産運用を実現しようと考えるのは、本末転倒であり、大きな自己矛盾ではないでしょうか。

当初の株式比率に問題はないか?

金融危機時には、たしかに株式の変動率が私たちの想像以上に大きくなりました。ただし、これについても「株式が長期的な投資対象としてふさわしいか」が問題なのではなく、私たちが「期待リターンとリスク許容度をどう考えるか」が本質的な問題なのだと思います。

一般個人にとっての資産運用とは「預貯金+αのリターン」を追求することであり、預貯金すなわち生活資金をきちんと確保しながら、残りの余剰資金を増やしていくことが原則となります。最終的に余剰資金を大きく増やしたい(期待リターンを高めたい)ならば、株式への配分比率をできる限り長期にわたって高めに設定する必要があるわけですが、それは同時に余剰資金が一時的あるいは最終的に大きく減る可能性もはらんでいます。

生活資金が十分に確保されているので、万が一、余剰資金が大きく減ることになっても構わないと考えられる(リスク許容度が高い)人ほど、ポートフォリオにおいて株式への配分比率を高めることができ、結果として高い期待リターンを追求することが可能になります。逆に、生活資金は十分にあるけれど、余剰資金が減るのはどうしても嫌だという人や、生活資金がまだ十分に確保されていないという人は、リスク許容度が低いと考えられます。期待リターンの高さはあきらめて、株式への配分比率を低めに抑えた安定的な運用をめざすべきでしょう。

このように、自分の資金的な余裕度や心理的な許容度によって「追求できるリターンの高さ=株式への配分比率」はおのずと決まってくるというのが、ポートフォリオを構築する際の基本的な考え方です。株式の想定外のリスクを必要以上に恐れたり、株式を途中で売却したいという誘惑にかられる人は、最初に決めた株式への配分比率に問題があったのではないかと、いちど疑ってみた方がいいかもしれません。

当然のことながら、最初に決めた各資産への配分比率が、自分の期待リターンやリスク許容度に合致していないと感じる人は、ポートフォリオの中身を見直す必要があります。また、ポートフォリオにおける資産配分比率が時間の経過とともに変化した場合、減少資産の追加購入や増加資産の一部売却によって、それを元の比率に戻すことを「リバランス」と言います。長期的にはリバランスを実施しない場合よりも、実施した場合の方が得られるリターンが高くなりやすいというデータがあることから、リバランスによるポートフォリオの見直しは有効な手段と考えられます。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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