1. いま聞きたいQ&A
Q

「信用取引」の仕組みや活用法について教えてください。

株価の下落局面でも収益が狙える

信用取引とは、投資家が証券会社から資金や株券を借りて株式の売買に参加する仕組みのことで、以下の2つの大きな特徴があります。

  • 株式の「買い」(信用買い)だけでなく、「売り」(空売り)からも取引を始めることができる
    →→→投資機会の拡大につながる
  • あらかじめ一定の担保(委託保証金)を預けることで、担保の約3.3倍にあたる規模の取引が可能になる
    →→→投資効率の増大につながる

空売りでは通常の現物取引と売り買いの順番が逆になり、最初に証券会社から借りた株券を売って、株価が下がったところで買い戻し、借りた株券を返却します。見かけ上は株式を「安く買って高く売った」のと同じになるため、売り値と買い戻し価格の差が収益となるわけです。このように、信用取引では株価の上昇局面だけでなく下落局面においても収益を狙うことが可能であり、現物取引と比較すると、単純計算で投資機会が2倍に増えることになります。

信用取引を始める際に必要な委託保証金の額は証券会社によって異なりますが、おおむね30万円程度からで、一般に実際の取引金額に対する保証金の割合は30%を維持するよう義務づけられています。これはすなわち、30万円の保証金を預ければ100万円まで信用取引が可能なことを意味し、現物取引と比べると、同じ手元資金で約3.3倍まで大きな収益を狙えることになります。

注意しておきたいのは、収益と同様に損失も大きく膨らむ可能性があることと、取引の期間が限定されていることされていることです。信用取引として一般的なのは証券取引所が条件を定める「制度信用」ですが、この制度信用で取引する場合は、証券会社から借りた資金や株券を6カ月以内に返す必要があります。信用取引の本質は、いわば6カ月の短期投資で相場に勝負を挑む行為であり、そのリスクの高さからみて、株式投資の初心者や長期投資を考えている投資家には原則としてお勧めできません。

悪いニュースには空売りで対処できる

ただし、例外的に長期投資においても信用取引を活用できそうなケースがあります。長期投資を前提としてすでに保有している銘柄の株価が、一時的に下落しそうな場合です。例えば最近では、トヨタ自動車やホンダが大規模なリコール問題に揺れていますが、こうした製品の不具合や企業の不祥事など、悪いニュースによって株価が下落する場面はよく見られます。

その悪いニュースが企業の経営状況や信用性に深刻なダメージを与えるものなのか、そして株価の下落があくまでも一過性のものなのか、判断が難しい場合には、同じ銘柄を空売りする手が考えられます。ある程度まで株価が下がった時点で、その銘柄を今後も保有する価値があると考えられれば、空売りを買い戻して得た収益で同じ銘柄を買い足してもいいでしょう。問題が深刻化して、保有していた株式を売却しなければならなくなった場合でも、空売りを買い戻すことで、株価が下落した分の損失は埋めることが可能です。

また、信用取引を相場情報として活用することもできます。多くの銘柄では通常、買い残(信用買いの残高)が売り残(空売りの残高)を上回っています。買い残を売り残で割った数値を「信用倍率」と呼びますが、これが1倍に近づき、売り残が買い残に匹敵する規模まで増えてくると、近いうちに買い戻されて株価が上昇する、あるいは将来の売り圧力が少ないといった見方が市場に広がるため、株価が上昇しやすくなる傾向があります。

東名阪3市場を合計した買い残における含み損益の割合を表す「信用評価損益率」という指標もあります。信用買いを行った投資家は、株価が上昇して含み益が生じると早めに返済売りに踏み切るため、買い残の多くは含み損を抱えた投資家が株価の戻りを期待して持ち続けているものと考えられます。そのため、信用評価損益率は一般に0~20%の範囲で動き、0%に近づくほど相場全体としては当面の天井圏に近く、逆にマイナス15%を超えると底値圏に近いといわれます。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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