1. いま聞きたいQ&A
Q

個人の「投資力」を高めるには、どうしたらいいのでしょうか?

日本株は本当に投資対象として魅力がなかったのか?

私たち個人投資家の多くは、投資の知識も経験も乏しいうえに、膨大な市場データを瞬時に収集・解析するような技術や能力も持ち合わせていません。しかし、そんな無力な私たちでも、投資にまつわるさまざまな情報を見聞きすることは可能です。それらを吟味しながら取捨選択したり、より役立つ情報へと自分なりの解釈を加えることで、少なくとも投資について「自分自身で考える力」は高まるのではないでしょうか。時にはちまたに流布している定説や、専門家と呼ばれる人たちの言葉に疑問を呈してみることも必要かもしれません。

例えば、日本株という投資対象について考えてみましょう。アベノミクスによる久々の相場活況や、来年(2014年)からNISA(少額投資非課税制度)が始まるのを機に、いま日本株への投資を検討している人も多いはずです。ただし、振り返ってみればほんの8カ月ほど前まで、日本株に対する評価は散々なものでした。日本経済にもう大きな成長は見込めない、あるいは欧米企業に比べて日本企業のROE(自己資本利益率)が低いなどの理由から、私たち日本人の間でさえ日本株への投資を敬遠する動きが広がったのです。

日本株は本当に、投資対象として魅力がなかったのでしょうか? 日経平均株価、S&P500種株価指数、ユーロストック50という日米欧を代表する株価指数について、それぞれ配当を全額再投資した場合の配当込み指数を円換算して比較すると、興味深い事実が浮かび上がります。それぞれ2001年末を100とすると、アベノミクス相場が始まる前の2012年10月末時点で日経平均株価が99.0、S&P500種株価指数が94.5、ユーロストック50が83.7となっており、日経平均株価が最も高い水準にありました。

当時は為替相場が1ドル=80円程度、1ユーロ=103円程度まで円高が進んでおり、欧米株はその分、円建てに直すと価値が目減りします。日本株の低迷要因として円高の影響がよく指摘されますが、私たち日本の投資家にとっては、円高時には日本株以上に外国株がさえないケースもあるわけです。「実際に投資する」という現実的な視点から見れば、日本株だけを投資対象から外すのは、おかしいのではないでしょうか。むしろ私たちにとってこの10年は、日本株と外国株の双方を割安に買える「チャンスの10年」だったかもしれないのです。

必ずしも「コストが安い=優れた投信」ではない

さらに違った角度から日本株を見てみましょう。以前にも紹介しましたが、野村総合研究所の調査によると、2001年から2010年までの10年間にTOPIX(東証株価指数)の騰落率がマイナス34%だった一方で、同期間に東証1部上場全銘柄の48%がプラスの騰落率となっていました。それら値上がりした銘柄の平均リターンは90%を超えています。別の調査では日経平均株価と全上場企業の間でも同様の関係を示す結果が出ており、個別株のレベルで見る限り、日本株は意外と有望な投資先だったことが分かります。

こうしたデータから考えられるのは、TOPIXや日経平均株価は市場全体の価格動向を表す一方、日本株市場の個別銘柄の動向や実態を十分に反映しているわけではないということです。それはすなわち、私たちがTOPIXや日経平均株価に連動するタイプのインデックス型投信やETF(上場投資信託)に投資した場合、本当に日本株市場全体へ投資したことになるのかという疑問をはらむことになります。

私たちが日本株投信を選ぶにあたっては、株価指数に連動するインデックス型投信やETFと、プロの運用担当者が株価指数を超える成績を目指して独自に運用を行うアクティブ型投信のどちらが優れているのかという問題がつきまといます。最近では以前にも増して、毎年かかる信託報酬という運用コストの相対的な安さから、インデックス型投信やETFへの注目が高まっているようです。

言うまでもないことですが、必ずしも「コストが安い=優れている」わけではありません。前述したように、株価指数の中に「有望株」の成長性が埋もれてしまっているのだとしたら、それらを掘り起こすのにある程度のコストを払うことには意味があります。まさしくアクティブ型投信の出番です。

悩ましいのは、アクティブ型の日本株投信もそれほど頼りにならないということです。アクティブ型にはベンチマーク(運用の目安)としてTOPIXを採用するものが多く、運用成績がTOPIXから大きく離れることを嫌う傾向があります。結果として運用の中身がインデックス型と似てしまい、「コストだけ高いインデックス型投信」と揶揄(やゆ)されても仕方ないようなケースも目立ちます。ただし、それでもアクティブ型のおおむね4割程度は年間の運用収益で株価指数の騰落率を上回っており、有望株の発掘に積極果敢に挑んでいる投信も確実に存在します。

私たちにとって重要なのは、インデックス型とアクティブ型のどちらが優れているのかを決めることではありません。それぞれ一長一短があるのならば、両方に投資してみるほかないでしょう。もちろん、投資の仕方には若干の工夫が必要です。例えばアクティブ型を選ぶにあたっては、インデックス型からなるべく離れるため、時価総額の小さい中小型株に積極投資しているものや、組入銘柄数を少なく絞っているものに着目する-。このあたりは、個人ごとにじっくりと考えて判断すべき問題です。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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