1. いま聞きたいQ&A
Q

投信や株式に投資する際、参考になる傾向と対策があれば教えてください。

外債投信に投資する意味合いが変わった

昨年(2013年)に新規設定された890本の投信を見ると、分配金を出す回数を年1~2回に絞ったタイプの割合が65%に上る一方で、2009~12年に新規設定の3~5割を占めていた毎月分配型の割合は3割弱まで低下しました。かつては毎月分配型の代名詞だった外債投信『グローバル・ソブリン・オープン』(国際投信投資顧問)が、運用益のほぼ全額を再投資に回すタイプを新設するなど、既存の投信においても分配のあり方を見直す動きが広がっています。

こうした方針転換の背景として、個人投資家の心理状態が変わってきたことが挙げられます。アベノミクスを通じたインフレ期待の高まりや、今年から始まったNISA(少額投資非課税制度)への対応として、個人投資家は目先の運用成果を分配金として受け取ることよりも、将来の価格上昇や再投資の効果を強く意識するようになってきました。いわば運用が短期志向から長期志向へとシフトしてきたわけで、それ自体は投資家にとっても投信にとっても、いたって正常かつ健全な方向への変化と評価できます。

ひとつ注意しておきたいのは、私たちがこれから外債投信に投資する場合、先進国の金利が下降局面にあって毎月分配型がもてはやされていた頃とは、意味合いが大きく異なってくるということです。

FRB(米連邦準備理事会)が量的金融緩和の縮小を決めたことで、今後は債券から株式への資金シフト(グレート・ローテーション)の流れが強まり、世界的に金利が上昇しやすくなると予想されます。金利が上昇する局面では、外債投信が新たに組み入れる債券において利子収入が増える半面、すでに保有している債券の価格は下落します。利子収入を再投資すれば、その分も価格下落によって損失につながります。

一方で、外債投信への投資は為替変動の影響を受けるため、円安が進むと為替差益が得られます。外債投信が米ドル建てであれば、金利上昇による債券価格の下落分を補うほどに今後も円安・ドル高が進むかどうかが、運用成果の大きなカギを握ることになるわけです。

現在は割安な「将来のグロース株」を探す

株式運用は、その投資スタイル(銘柄の選び方)によって「グロース株(成長株)投資」と「バリュー株(割安株)投資」に大別できます。グロース株投資は、例えばネット関連企業のようにすでに高い成長性を示し、今後も成長余地が大きいと見込まれる銘柄群に投資するもの。バリュー株投資は、企業の潜在的な実力以上に売り込まれるなどの理由で、割安に放置された銘柄群に投資するスタイルです。

株価の割安さを判断する指標のひとつ、PBR(株価純資産倍率)の水準によって日本株をグロース株とバリュー株に分類し、年間の株価騰落率を比較すると、以前はバリュー株が優位の時期が多かったものの、2009年以降はグロース株が優位の局面が続いています

その背景として、

  • リーマン・ショックを機に、信用リスクの高い割安銘柄を敬遠する動きが広がった
  • 株主配分を重視する日本企業が増えたことで、割安に放置される優良銘柄が減った
  • アベノミクスによって日本企業の業績拡大への期待が高まった

などの要因が挙げられます。

これから日本の個別株の購入を検討する場合、一見すると、グロース株に比重を置いて銘柄を選んだ方が投資成果を得られやすいように思えます。ここでの注意点は、グロース株投資は相場の流れに乗る(追随する)「順張り」の性質が強いということ。経済物理学の研究によれば、順張りを行う投資家の割合が増えると、相場の変動が大きくなる傾向があるそうです。株式投資の初心者や、NISAで中長期にわたって安定した収益を狙いたいという人にとっては、株価変動リスクの大きさは気になるところでしょう。

ひとつの考え方として、グロース株における「成長」の時間軸を長く取るという方法があります。例えばNISAでこれから10年間、長期投資を行うと仮定すると、10年後に大きな成長が見込める銘柄が最も魅力的なことになります。

ある日本株投信のファンドマネージャーは、「1~2年先よりも10年先の方が分かることもある」と語っています。世界的な人口増加から予想されるエネルギーおよび環境への制約強化と省エネ技術のニーズ拡大、あるいは高齢化がもたらすであろう健康志向のさらなる高まり――。こうした連想の中から、現在は割安な「将来のグロース株」を探すというのも夢のある話ではないでしょうか。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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