1. いま聞きたいQ&A
Q

初心者がこれから投資を始める場合に、留意すべきポイントがあれば教えてください。(中編)

先進国国債は国内外の株式と相性が良い

投資助言会社イボットソン・アソシエイツ・ジャパンの試算によると、外債(外国債券)の期待リターンは2010年3月末には3%弱ありましたが、今年(15年)3月末には1%程度まで低下しています。リスクに見合うだけのリターンが期待できないことから、ここにきて市場関係者のなかには「外債不要論」を唱える人も出てきました。こうした現状を踏まえながら、初心者にとっての外債投資を考えてみたいと思います。

外債には個人向け日本国債「変動10」のような、一般個人にとって利便性の高い商品がありません。そこでまず、外債投信そのものについての検討から始めることにします。前回も紹介したように今後は世界的な金利上昇局面に向かう可能性が高いため、私たちが外債投信に期待できるリターンが以前のような好水準に戻ることは、しばらくはないと見ていいでしょう。

ただ、外債のなかには米国ハイイールド債や新興国国債など相対的に信用リスクが高い分、利回りも高くなる債券があります。これらに特化して投資するタイプの外債投信を購入することで、私たちは少なくとも外債の利回り部分については期待値を向上させることが可能になります。

ここで注意したいのが、他の金融資産との組み合わせについてです。JPモルガン・アセット・マネジメントが主要な金融資産間の相関性を04年末~14年末の期間で算出したデータによると、米国ハイイールド債と新興国国債(米ドル建て)の値動きは、日本株式や外国株式と連動性が高いという結果が出ています。逆に外債のなかで連動性が低いのは先進国国債です

分散投資においては、できるだけ値動きが異なる金融資産同士を組み合わせることによって十分な効果が期待できる――というのが基本的な考え方です。どうしても株式には投資したくないという人ならともかく、あなたが株式への投資も考えているならば、例え期待リターンは低くとも、外債投信のなかでは先進国国債に投資するタイプを選ぶことも有効な選択肢の一つでしょう。

資産全体のなかで外債部分の投資比率をどの程度にするかという問題もあります。公的年金の運用を手掛けるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)では、14年10月に目標とする資産配分比率の変更を発表しました。新しい配分比率では国内債券が35%、外国債券が15%、国内株式が25%、外国株式が25%となっています

この資産配分比率が正解かどうか、現時点では誰にも分かりませんが、これから長期の資産運用を始めようという初心者にとっては一つの基準として参考になるかもしれません。

信託報酬の低さが従来にも増して重要に

外債投信に期待できるリターンが低下しつつあるので、運用にかかる手数料については従来にも増して注意が必要です。特に運用期間中、継続的にかかってくる信託報酬は購入前によく比較・検討すべきでしょう。

外債投信の信託報酬は、年に1.5%以上かかるものから0.5%以下のものまで、商品によって結構な差があります。前述した先進国国債に投資する外債投信では、例えば機関投資家のベンチマークとして一般的な「シティ世界国債インデックス(除く日本)」への連動を目指すタイプなど、いわゆるインデックス型の商品で信託報酬の低いものが目立ちます

ちなみに証券会社が取り扱うETF(上場投資信託)のなかにも、「シティ世界国債インデックス(除く日本)」への連動を目指す商品があり、こちらは信託報酬は年0.25%程度となっています。ETFは外債投信に比べて最小購入単位が大きいので、投資資金や利用する金融機関などに合わせて自分の使いやすい方を選ぶといいでしょう。

外債投信以外の選択肢としては、例えば外債と似たような機能を持つ投資対象として、銀行などが取り扱っている外貨預金が考えられます。

かつて外貨預金といえば、為替取引の手数料が高く、投資家にとって不利だともいわれていました。最近ではインターネットのオンライン取引を利用すると、手数料と金利の両面で従来より有利になるケースも見られます。金利の高い通貨を選び、満期になると追加の手数料なしに自動継続されるコースや、期間限定の金利優遇キャンペーンなどをうまく使えば、相応の好リターンが期待できそうな気もします。

ただし、これは新興国通貨などの外貨建て債券で運用する外債投信にもいえることですが、現時点でいくら金利が高くても、リターンを円ベースに換算すると、長期的には金利の有利分は為替変動によって消えてしまうというのが一般的な考え方です。高金利の国ではインフレ率も日本より高いことが多いため、購買力平価の効果によって、その国の通貨は円に対して長期的に下落する(円高になる)傾向が強いからです。

一方で、これから円安が進む可能性が相対的に高い米ドルを選んだ場合、金利が低いためにほぼ「為替のみの勝負」となります。このように、外貨預金は金利水準と為替変動の見合いで使い方が難しいため、初心者が長期投資の手段として用いるのには疑問符が付きます。

次回は国際分散投資の最終段階として、国内外の株式部分について投資対象を検討します。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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