1. いま聞きたいQ&A
Q

外国債券ファンド(投資信託)の運用成績が悪化しているのは何故ですか?

急激な円高によって基準価額が下落

今回は一般の個人投資家にも馴染みの深い、先進国の国債を中心に投資する外国債券ファンドを例にとりながら、運用の現状と今後について考えてみたいと思います。外国債券ファンドの基準価額(時価)が下落するおもな要因としては、(1)金利変動リスク(2)信用リスク(3)為替変動リスク――の3つが挙げられます。

金利変動リスクは前回も説明したとおり、投資国の市中金利が上昇すると国債価格が下落するため、国債の途中売却にあたって(すなわち時価に換算した場合に)、運用利回りが低下するリスクのこと。信用リスクとは、国債の発行体である投資国がデフォルト(債務不履行)に陥って、元利金が得られなくなるリスクのことです。為替変動リスクは、投資国の通貨が円に対して下落すると、円ベースでの受取額が目減りするリスクです。

サブプライムローン問題の影響による景気悪化に対応するため、いま世界各国とも金利を引き下げる方向にあります。主要各国の政策金利は2008年12月4日現在、日本0.30%、米国1.00%、ユーロ圏2.50%、豪州4.25%など。これらを2008年6月時点の金利水準と比較すると、日本で0.20%、米国で1.00%、ユーロ圏で1.50%、豪州で3.00%、それぞれ低下したことになります。こうした金利低下傾向を受けて、外国債券ファンドが過去の高金利時に投資した国債の価格は、現地通貨ベースで見ると上昇しています。

一方で、市中金利の低下にともない、新規に発行される国債の利率も低下するため、外国債券ファンドが新たに投資する国債から得られる利息収入は従来よりも減少し、高利息の積み上げによる「うまみ」(収益性)が低下することになります。実際に10年国債の利回りで見た国内外の金利差は、ここにきて急速に縮小してきました。2008年11月初旬に2.4%程度あった日米の金利差は、12月3日の終値では1.3%程度まで縮小。英国との金利差も3%程度から2.1%程度まで縮まっています。

つまり現状では、市中金利の低下が外国債券ファンドの基準価額に及ぼす影響は、「国債価格の上昇分」と「利息収入の低下分」の綱引きということになります。

信用リスクについては、高格付けをもつ先進国の国債や政府機関発行債券を中心に投資している外国債券ファンドなら、限りなくゼロに近いと考えていいでしょう。問題は、為替変動リスクです。

2008年12月3日現在の為替レート(終値)を見ると、「1米ドル=93.3499円」「1ユーロ=118.675728円」「1豪ドル=60.434725円」などとなっています。過去半年間で、米ドルに対しては11.2%、ユーロに対しては26.9%、豪ドルに対しては39.6%、それぞれ円高が進んだ計算です。外国債券ファンドにおける基準価額の下落は、実はそのほとんどが、こうした急激な円高によるところが大きいようです。

今後は分配金の引き下げ増加も考えられる

毎月など定期的に分配金を出すタイプの外国債券ファンドでは、その分配金が基準価額を下げる要因にもなります。「資産を運用しながら月々の現金収入も得られる」という点が受けて、毎月分配型の外国債券ファンドは大きな人気を呼びましたが、そもそも分配金には「運用の成果を前倒しで取り崩す」という意味合いもあるわけです。

投資家にとって、分配金は受け取るたびに課税の対象となるうえ、複利効果も十分に効かないため、運用が長期になるほど効率が悪いと言われます。ただし、今回のように基準価額が下落する局面では、分配金によって「マイナス複利」の効果を薄めることが逆に効果的に働く場合もあります。

極端な例ですが、基準価額が1万円の外国債券ファンドに投資した後、数カ月にわたって運用成績が毎月10%ずつマイナスになったとします。分配が1年に一度のファンド(期間中に分配なし)と、毎月分配型ファンドで基準価額の推移を比較すると、以下のようになります(運用は1カ月複利、分配金は50円で計算)。

  1カ月後 2カ月後 3カ月後
分配が1年に一度 9,000円 8,100円 7,290円
毎月分配型
(分配金)
8,950円
(50円)
8,005円
(50円)
7,155円
(50円)

毎月分配型では事実上、7155円に分配金の150円をプラスした7305円が3カ月後の基準価額ということになり、分配が1年に一度のファンドよりもマイナスの度合いが小さくなるのです。

しかし、いずれにしても分配金のおもな原資となる利息収入の減少や、基準価額の下落傾向が続くようだと、分配金を出し続けることがファンドにとって負担になるケースも考えられます。実際に一部の外国債券ファンドでは分配金の引き下げに踏み切っており、今後の経済情勢によっては同じような動きが増えてくるかもしれません。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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