金利低下が続いて債券投信はリターンを上げやすかった
実際の投資を始める前に、一般論として各種の代表的な金融資産にはどのような特徴があるのか、大まかに知っておくことが大切です。以下に経済環境との関係をまとめてみます。
- ・日本債券、円預金=デフレと円高に強い
- ・外国債券、外貨預金=円安に強い
- ・日本株式、国内REIT(不動産投資信託)=インフレに強い
- ・外国株式、海外REIT=インフレと円安に強い
これまで一度も投資の経験がない日本人の資産は、当然のことながら円預金に集中しているはずです。日本経済が長らくデフレと円高に苦しむなかで資産を円預金に集中させてきたことは、例えそれが無意識であったとしても、ある意味で正解だったといえるでしょう。
しかしながら、アベノミクスと日銀の金融緩和によって経済環境は大きく転換してきました。今後は逆に、インフレや円安に強い資産づくりも考えていく必要が出てきたのです。
ちなみに資産運用の王道といわれる「国際分散投資」では、基本的に国内外の株式・債券という4種類の金融資産を同時に均等分ずつ保有します。こうして将来的にどのような経済環境が訪れても、資産全体の価値を大きく毀損することなく、なおかつある程度のリターンを期待できるような態勢を整えておくわけです。
ただし、いつでも誰でも、同じように4種類の金融資産へ均等投資すればいいわけではありません。金融資産それぞれに特徴があるように、私たちがそれらの金融資産に投資する手段(商品)にも特徴があり、その時々の経済環境や私たちの投資経験などによって、重きを置いて選ぶべき対象は微妙に変わってきます。
ここでは初心者でも納得して投資に臨むことができるように、さまざまな観点から、これから投資するのにふさわしい金融資産や商品を検討していきたいと思います。まずは相対的にリスクが低い債券への投資から考えてみましょう。
例えば、日本の個人投資家にとってなじみの深い債券投信(投資信託)は、債券投資の手段として今後も有効といえるのでしょうか。過去20年以上にわたって、先進国では市場金利がほぼ一貫して低下し続けてきました。実はこうした世界的な金利低下局面では、債券投信はある程度のリターンを上げやすいのです。
市場金利の低下局面で、債券投信が保有している債券を中途売却するケースを考えてみましょう。保有債券は相対的に金利が高いときに購入しているため、すでに相当量の金利収入(インカムゲイン)が積み上がっています。しかも、市場金利の低下を通じて債券価格は値上がりしているため、中途売却によって売買益(キャピタルゲイン)も得られます。
このようにインカムとキャピタルの両面でリターンが得られるため、金利低下局面が長く続くほど、債券投信は好リターンを上げやすくなるわけです。
インフレにも対応できる変動金利型の個人向け国債
米国は今年(2015年)中にも利上げに踏み切ることが濃厚で、日本や欧州も遅かれ早かれ、金融緩和の出口戦略から利上げに向かうことになるでしょう。すなわち今後しばらくは、世界的に金利上昇の圧力が強まる局面が続くと考えられます。債券投信においては、国内外を問わず従来のように好リターンを上げるのが難しくなると予想されます。市場金利の動向によっては損失が出る可能性もあるかもしれません。
それでは、私たちが債券を直接購入するという手段はどうでしょうか。実はひとつだけ、投資の初心者でもこれから購入するのに適している商品があります。証券会社や銀行などが扱っている個人向け国債の「変動10」(変動金利10年型)というタイプです。
この商品は10年満期の日本国債ですが、利率が半年ごとに見直される仕組みになっており、将来的に市場金利が上昇すると「変動10」の利率も連動して上昇します。冒頭に挙げたように、日本国債にはもともとデフレと円高に強いという特徴がありますが、「変動10」はインフレに強いという特徴も併せ持っているわけです。
利率は機関投資家などの間で売買される国債の市場実勢(基準金利)に0.66を掛けたもので、今年8月発行分の初回の適用利率は0.34%。1万円から購入でき、購入手数料はかかりません。購入から1年を経過した後は、直近の利払い2回分をペナルティとして支払えば元本保証で中途換金することも可能です。
現状で利回りが高いわけではありませんが、それでも銀行の円定期預金などと比べれば10倍以上のリターンに相当します。インフレに対応できる点や元本保証で中途換金できる利便性などを考えると、初心者がこれから最初に投資する商品としては無難かつ有力といえるのではないでしょうか。
次回は引き続き、外国債券や国内外の株式についても投資対象を検討します。