1. いま聞きたいQ&A
Q

初心者でも株式投資を楽しみながら長く続ける方法があれば、教えてください。(後編)

コア・サテライト戦略で収益の底上げを図る

日本株インデックス投信を通じて株式投資の世界に慣れ親しむにつれて、あなたの中にいくつかの「気付き」が生まれてくることでしょう。

前回も紹介したように、インデックス投信による運用成果はあくまでも相場次第、市場平均次第で決まってきます。企業の事業活動に資金を投じ、その利益成長分をリターンとして受け取るという株式投資の本質的な醍醐味は、インデックス投信では味わうことができません。

インデックス(株価指数)を構成する銘柄群の中には将来を嘱望される成長企業もあれば、かなり以前に成長が鈍化した成熟企業もあります。インデックス投信では自動的に十分な分散投資が可能になる半面、あなたの意に沿わない銘柄にまで投資を強いられることになるわけです

こうしてみると収益性や自らの投資に対する納得度の面で、インデックス投信にいささかの物足りなさを感じる人も少なくないかもしれません。そんな場合に検討してみたいのが「コア・サテライト戦略」と呼ばれる投資手法です。

コア・サテライト戦略は、安定的に資産を積み立てるコア(中核)部分と、多少のリスクを取ってでも高いリターンを狙うサテライト(衛星)部分を分けて管理することで、全体的な収益の底上げを図るという考え方。年金基金など機関投資家の間では標準的な戦略として知られています。

例えば、コア部分として日本株インデックス投信に毎月少しずつ投資しながら、そこにサテライト部分として「日本株アクティブ投信」や個別株を無理のない範囲で加えていく――。それが株式投資を長期で楽しむための第2、第3のステップとなります。

運用資産の中に異なる「投資の形」を持つ

日本株アクティブ投信について従来からよくいわれるのが、市場平均に勝てる商品が少ないということ。実際に金融情報会社QUICK・QBRの分析では、今年(2014年)6月末現在で10年以上の運用実績がある日本株アクティブ投信のうち、過去10年間の運用成績がTOPIX(配当込み)を上回っていたのは33%にすぎないというデータが出ています。

ただし、コア・サテライト戦略において日本株アクティブ投信を選ぶ際には、こうした市場平均に対する勝ち負けが必ずしも重要とは限りません。

例えば、組入比率の上位に時価総額の大きな銘柄を数多く並べてTOPIXに近い運用を行いながら、なおかつ一定期間中の運用成績がTOPIXを少しだけ上回ったアクティブ投信があるとします。わざわざインデックス投信よりも高い運用コストを負担して、そのアクティブ投信を購入するぐらいなら、すでに保有しているインデックス投信を追加購入した方がいいと思いませんか?

コア・サテライト戦略で私たちが意識すべきポイントは、自分の運用資産の中に複数の異なる「投資の形」を持つことです。ちなみに、前述のデータで過去10年間の運用成績がTOPIXを大きく上回ったアクティブ投信には、新興株や中小型株などを中心に独自の銘柄選択を打ち出しているものが目立ちます。

もちろん、それらのアクティブ投信が今後の10年間、20年間においても好成績を収めるという保証はありません。むしろ今後の10年間、20年間でどのような投資が成功するのか誰にも分からないからこそ、異なる投資の形を持っておくことが結果として収益性の向上につながるといえるのです

大型株を中心に投資するアクティブ投信の中にも、銘柄数を30程度に絞ったものや、組入比率の上位に知名度や注目度の低い銘柄を入れて勝負しているものなど、運用の独自性を感じさせる商品は多数あります。運用報告書でファンドマネージャーが銘柄を売買した経緯を確認すれば、あなたが個別株に投資する際の参考にもなるはずです。

個別株への投資にあたっても、注意点はアクティブ投信の場合とおおむね同じです。特に肝心なのは最初から「10年以上の長期保有に適した銘柄を見つけてやろう」などと力まないこと。さまざまな銘柄選択法が紹介されているので、それらを順次あるいは同時に試しながら、自分の得意な投資の形や長期で保有したくなる銘柄をじっくり探すことを心がけましょう。

参考として、初心者でも一度は試してみたい代表的な銘柄選択法を挙げてみます。

  • ●ビジネスモデルや技術力などの企業価値に着目する
  • ●次世代自動車やインフラ輸出など長期的な産業テーマに即して有望な銘柄を選ぶ
  • ●各種指標を用いて株価の割安さや資本効率を測る
  • ●配当実績や配当利回りに着目する(インカムゲインを重視した銘柄選び)

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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