1. いま聞きたいQ&A
Q

初心者でも株式投資を楽しみながら長く続ける方法があれば、教えてください。(前編)

手順を踏みながら心理的欲求を満たす

ひと口に「楽しむ」といっても、株式投資の何を楽しいと感じるかは人によって違うはずです。とにかくもうかれば楽しいという人もいれば、これからどの企業が成長するのか予測すること自体が楽しいという人もいるでしょう。結局のところ、株式投資の楽しみ方は人それぞれです。

しかし、だからといって誰もが株式投資を楽しめるわけではありません。ポイントは2つあると思います。ひとつは、さまざまな投資の手法や対象をおっくうがらずにひと通り試してみる、あるいは検討してみること。複数の比較や組み合わせの中から、自分に適した投資の形が見つかることが多々あります。

もうひとつのポイントは、自分の心が満たされるような投資を心がけること。例えば私たち一般の個人投資家が10年以上の長期で株式投資にのぞむ際の心理的欲求として、以下のようなものが挙げられます。

  • ●投資に費やす資金、労力、時間のいずれも無理のない範囲内に収めたい
  • ●将来的にある程度の収益が期待できるという実感を持ちたい
  • ●自分の投資行動を検証し、投資成果について自分なりに納得したい

すなわち、私たちはなるべく手間ひまや費用をかけずにゆったりと投資を行い、そこそこのリターンを期待し、なおかつ株式投資をできるだけ「自分のもの」にしたいと願っているわけです。こうしたわがままな欲求に現実の投資をどこまで近づけられるかが、株式投資を楽しむコツといえるかもしれません。

注意しておきたいのは、株式投資における「手順」の大切さです。特に初心者の場合、手順を間違えたために予想外の物理的・心理的負担を抱え込んでしまい、株式投資を楽しめなくなるケースも少なくありません。ここでは参考例として日本株投資を取り上げ、前述した3つの心理的欲求にそれぞれ対応する投資を順次、試していくというプロセスを考えてみましょう。

他力本願の投資から自分で手を加える投資へ

最初の一歩として適しているのが、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などの株価指数に連動した運用成績を目指す「日本株インデックス投信」への投資です。銘柄選択の難しさがない、自動的に分散効果が得られる、相対的に投資コストを低く抑えられるといったメリットがあり、毎月一定額ずつ自動購入していくドル・コスト平均法も活用できます。手軽に株式投資を始めるにはうってつけの方法でしょう。

日本株インデックス投信への投資では、株価指数への連動を目指している以上、泣いても笑っても運用成績は「相場次第」であり、他力本願といえます。初心者はあえて他力本願の投資からスタートすることで、値動きの大きさなど株式の世界に“純粋に”慣れ親しむと同時に、他力本願の限界も実感することができると思います

ドル・コスト平均法では株価が高い時には少なく、安い時には多くの口数を購入することで、投資の平均単価を低く抑える効果が得られます。実はこうして購入量にメリハリをつけることは、私たちが投資に手を加え始めることを意味します。

手間ひまが多少は増えるものの、投資にさらなる手を加えて収益性を高める方法もあります。投資教育家の岡本和久氏が提唱する「バリュー平均法」では、ドル・コスト平均法のように毎月の投資額を一定に保つのではなく、毎月の投資によって生じる「累積投資残高(時価)」が一定額ずつ増えるように調整していきます。

例えば、現在1万円で1口購入できる日本株インデックス投信を、毎月10万円ずつ購入していくとしましょう。最初の月は10万円で10口購入できます。2カ月目に投信の価格が1万2,500円に値上がりした場合、ドル・コスト平均法では最初の月と同じく10万円を投じて8口購入するため、2カ月後における累積投資残高は「1万2,500円×18口=22万5,000円」となります。

一方、バリュー平均法では累積投資残高が10万円ずつ積み上がるように購入するので、2カ月目は7万5,000円で6口だけ購入します。結果として2カ月後における累積投資残高は「1万2,500円×16口=20万円」となります。価格の推移によっては、ある月に追加投資を行わず、逆に一定の金額分を売却するケースも出てきます。このようにバリュー平均法はドル・コスト平均法以上に、価格が高い時の買い控えと安い時の買い増しを徹底する仕組みになっており、投資の平均単価をさらに低く抑えた効率的な株式投資が可能になります。

次回は引き続き、より能動的にリターンを追求しながら、実践を通じて株式投資への学習や経験を深めていくプロセスについて紹介します。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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