4 為替相場はどんな時にどう動く?
為替相場を変動させる要因についてもう少し具体的に見てみよう。もちろん一概には言えないが、一般的には次のようなケースで為替相場の上昇や下降が起こりやすい。
景気が拡大している時 …上昇要因
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日本の景気が良くて、企業の業績も上向いている時には、日本の国債や日本企業の株式を買おうとする海外の投資家が増えるので、為替相場は円高になりやすい。逆に日本の景気が悪化し、企業の業績も低迷している時には為替相場は円安に向かう。
金利水準が高い時 …上昇要因
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日本の金利が諸外国よりも高ければ、日本の国債を買ったり、日本の銀行に預金したりする海外の投資家が増えると考えられので、円高になる。逆に金利が低ければ円安になりやすい。
ちなみに金利の水準は、景気の拡大や物価の安定を図るために、その国の「中央銀行(日本の場合は日本銀行)」と呼ばれる機関が政策的にコントロールしている面がある。
日本の場合、1990年代半ばから長い間景気が低迷していたので、そこから脱却するために日本銀行が金利を極めて低い水準になるように誘導していた(低金利政策)。これに比べると、欧米諸国などの金利は遙かに高かったので、為替相場は長らく円安傾向が続いていたんだ。
2000年代後半からは欧米諸国の金利も低下したので、日本の金利との差は以前よりも小さくなっている。そのため為替相場も、それまでの円安傾向から円高傾向に変わっているよ。
財政赤字が深刻化した時 …下降要因
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その国の支出が収入を大きく上回る状態を財政赤字っていう。その赤字を埋め合わせる手段のひとつとして発行されるのが「国債」だ。
国債を発行するのは悪いことではないが、支出が収入を上回る状態がずっと続いて多額の借金が積み上がっていくと、「あの国は、国債を通じて借りたお金をしっかりと返せるのだろうか?」という不安感が広がってしまう。この場合、その国の国債を買おうとする人は減るし、その国の企業に投資したいと考える人も減るので、為替相場は下落しやすい。
なお2010年以降、欧州諸国の統一通貨である「ユーロ」の相場が低迷しているけど、それはギリシャをはじめとする一部の欧州諸国の財政赤字が深刻化したことが背景にあるんだ。
(国債の健全性は財政指標以外にもその国の経済構造等もかかわってきます。日本国債については財務省ホームページに詳しく記述されていますので、そちらもあわせてご覧ください。)
政情不安が起こった時 …下降要因
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戦争に巻き込まれたり、国内で紛争が起こるなど政治が不安定になった場合、その国への投資を控える人が増えるので、為替相場は下落しやすい。
実際の為替相場はこれらの要因が複雑に絡み合って変動している。外国投資をする時には、為替相場の動向や、その動向に影響を与えるような国内外のさまざまなニュースにしっかりと目を向けるようにしよう。