1. 金融そもそも講座

第298回 戦略の明確化

新しい年の始まり。今年もなるべく「新しい視点」「別角度での視点」で読者の皆様にマーケットを見る目、それとの付き合い方などに関して情報を提供し、時には提案もして行きたい。変わらずよろしくお願いします。

年初に期待と不安が交錯するのはいつもの事だが、昨年からの継続を考えると今年も日々の動きが大きくなると予想される。今の世界では新型コロナウイルスに関しては「オミクロン」が主流だが、ウイルスの変異は頻繁だ。ワクチンが完成し、複数回の接種が当たり前になり、そして感染初期者向けの飲み薬ができた今の状況でも、人類にはウイルスの変異を予想したり制御する力はない。新たな変異も当然起こるだろう。

マーケットが新型コロナウイルスに関して全体的に耐性を持ち、業種によってはむしろプラスになることはよく知られた。業種による不利・有利を判断する上で、新種ウイルスの類型(感染力、重症化率など)を素早く判断することが今後も重要になる。米中対立は深度を増し、今年は各国に続いて世界経済で一番大きな立ち位置にいる米国も「利上げフェーズ」になる。

恐らく予想外の出来事、例えば新たな紛争、各国での政変などが起きるだろう。それらを冷静に判断しながら個々の決断につなげていけたらと思う。

戦略の明確化

筆者が今年一番重要になると考えるのは、「戦略の明確化」だ。マーケットに振り回されないためには、これが一番重要だ。何のために、どういう頻度で、動かせる資金の規模を決め、そしてどのような投資スタンスを貫くのか。

筆者は古いタイプかもしれないが、売り買いを日中何回も繰り返すような投資スタイルはとらない。仕事もいろいろ入っていて、時には1日全くマーケットを見られない日もある。コアな投資(銘柄や投信)は10年以上「そのまま」というのも多い。たまに見て順調なのを見るのは楽しい。そして逆は悲しい。

朝マーケットに入って引けには出る、という方もいる。「宵越しの相場変動リスクはとらない」という考え方はあり得る。その代わり日中に売ったり買ったりなど。東京市場は海外マーケット、特にニューヨークに大きく振られるので、それも一つの方法だと思う。

その「組み合わせ」という方も多い。主力の投資はほとんど動かさないが、「時々アイデアが浮かぶので、その時は特定銘柄で朝入って夕方出る」というのもありだろう。コストが安い。信用やオプションなどを使う人、使わない人。様々だ。既存ポジションを守るため信用を使う人も居るだろうし、もちろん信用を買いに使うのもありだ。オプションも立派な投資手段だ。

重要なのは自分の持つ資産全体(不動産、金、暗号資産など)を見て、株式市場への投資振り分けでバランスを取ること。人は人生の様々な局面で資金が必要になる。どの時点では流動性の高い資産を持っておくべきか、というのはある程度予測できるものだ。

長い目で見たときの人生設計の中で、自分の資産全体の中で株式や債券の投資をどのように位置づけるのか、時にじっくり考えると戦略立案に資すると考える。

クールな視点

戦略を立て、その上で戦術をある程度確立したら、その次に必要なのは「クールな視点」だと思う。日本の株価を含めて世界の株価の数値的レベルは上振れた。つまり数値が膨れた。特に代表的指標がそうだ。ニューヨークのダウ工業株30種平均などは4万ドルに接近しかねない勢いだ。

なので、日々のアップダウンの数値は大きくなる。去年気になったのは「ニューヨーク・ダウが500ドル以上値上がり(値下がり)」といった報道が多かったことだ。これはいただけない。分母が1万の時と4万の時では、同じ500ドルのアップダウンでも、意味合いが全く違う。

メディアの時にセンセーショナルな数字の扱いは困ったものだが、常に冷静でいることが必要だ。騒ぐのはメディアの習い性だ。筆者は常に数値を見て、それに投資家がどう動くか予想しながらも、アップダウンは最終的にはパーセンテージで判断するようにしている。視点が全く異なってくる。

「オミクロン報道」に関しては先日書いた。投資も人間が行うことなので、人間の習い性からは時に逃れられない。しかし「経済活動が実際にどう変わるのか」を常に考えることは重要だし、それが人間の経済活動のどの部分にどういう影響を与えるのかは、常にクールに考える必要がある。マーケットは最後はその「クールな見方」に収斂(しゅうれん)するので、そこには時差的収益機会が存在する。

波乱含みも上値トライ?

その上で今年1年のマーケットを予想してみると、全体的には上値トライかなと予想している。勢いは鈍るが「マーケット的米国一極」の状況はしばらく変わらないと思えるし、世界のマーケットは日本を含めてその動向に大きく左右される。

米中の覇権争い深化など世界は複雑化しているが、「どこに運用資産を置けるのか」という観点から見ると、やはり米国が突出している。国としての力は相対的には落ちてきているが、「新しい産業、企業を生み出す力」は依然として世界で傑出している。国として台頭期にある中国にもその勢いがあり、深圳などが持つモメンタムはすごい。

しかし国としての政策が「共同富裕」の名の下に「上をたたく」方針の中国や関連市場に、大きな資金を安心して置ける人は少ないだろう。投資の世界で「米中覇権争い」はない。その面でインドなどの可能性のある国は面白いと思う。コロナ禍も気付かないうちにニュースにならないほどに制御した。

むろん米国もマーケットの将来に影響しそうな様々な問題を抱えている。バイデン政権の支持率低下は気がかりだし、何よりもトランプ的志向で米国という国が従来我々が想定している国ではなくなる可能性があるのは気になる。トランプの4年間にアメリカの株価は大きく上昇したから、マーケットはあまり気にしていないのかもしれない。しかし筆者はあの「議会襲撃事件」がずっと気になっている。

多分波乱は1年の間に何回も起こる。その波乱に耐える力(資産分散を含め)、クールな思考と行動が必要だろう。小ぶりな資金をうまく回転させるのが賢明な年かもしれない。しかしそれは投資家個々の戦略・戦術次第だ。読者諸氏の武運を祈りたい。

ご注意:本コラムは、上記掲載日から2週間程度前に伊藤洋一氏が執筆されたものです。
閲覧される時期によっては、現状に即さないことも予想されます。また、内容には仮定に基づいた記述も含まれます。ご了承ください。

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