第1回インタビュー 池田 蒼氏
現場に足を運び実際の困難知る

社会を大きく変えるような存在になることを目指して、2025年1月にTempest AIを起業しました。世界の金融、経済の意思決定をAI(人工知能)で変革したいという思いで、金融機関などとAIソリューションの開発に取り組んでいます。
従業員数は25人で、そのほとんどが東京大学に在学中の学生です。私自身、東大の2年生で、志を同じくする仲間を学内で募って起業しました。日経STOCKリーグ参加時のチームメンバーも力を貸してくれており、あのとき一緒に挑戦した絆が今に続いています。
日経STOCKリーグは学校の授業の一環でしたが、説明会で話を聞いてがぜん興味がわきました。本気で取り組む気持ちがあるメンバーだけでチームを結成し、「未病」(病気ではないが健康とはいえない)をテーマに、健康の改善に資する企業への投資を通じて未病の基盤づくりに挑む内容としました。
仮説を立て、それを検証するために研究者や企業トップへのインタビュー、展示会訪問などのフィールドワークを重ね、学びを深めていきました。初めはアポイントメントを取るのも勇気がいりましたが、思いのほかオープンに受け入れてもらえることに驚きました。
現場の話を聞くと、自分たちの仮説と現場で直面している課題に大きなズレがあることを痛感しました。そうしたくてもできないという複雑な事情があることを知り、現実のビジネスの難しさを垣間見ることができました。実際に動いてみないと気付けないことは多くあります。数学や歴史など普段の勉強が基礎になることもよく分かりました。
未来へつながる大切な接続期間
日経STOCKリーグに本気で挑戦して得られたのは、自分の人生をかけて取り組みたい研究テーマとの出合いでした。
レポートを仕上げていく過程で、ESG(環境・社会・企業統治)や健康経営など、企業の底力を支えている数値で表しにくい定性情報をどう評価するかという点に課題を感じました。大規模言語モデル(LLM)を活用すれば、定性情報を定性情報のまま分析できるのではないか。ESGが企業価値の向上にどのように寄与するか解析する「柳モデル」などにも興味を持ち、東京大学で学ぶことに決めました。
教科書での勉強は大事ですが、社会の実情を知ることも大切です。日経STOCKリーグは社会につながる窓のようなものだと感じました。現場を見て、様々な刺激を受けながら自分の頭で考える。それをきっかけに自分自身の本当の興味・関心に気付き、深めることにつながりました。
大学生・社会人という未来へつながる接続期間である高校時代だからこそ、日経STOCKリーグでの学びや金融・経済との出合いはとても有意義なものでした。STOCKリーグへの参加を共通言語に多くの人と出会い、交流も広がります。私の場合、それが東大への進学や起業という現在の進路につながりました。皆さんもぜひ挑戦してみてください。

- 池田 蒼氏 Tempest AI 代表取締役 最高経営責任者(CEO)
- いけだ・あお 第23回日経STOCKリーグ部門優秀賞・高校部門(神奈川県立相模原中等教育学校5年時)。東京大学経済学部(在学中)。「金融の意思決定をAIで再構築する」ことを目指して2025年1月、TempestAIを起業