長い間、日本の株式市場は東京証券取引所や大阪証券取引所など証券取引所と店頭市場(現在は一般にジャスダックと呼ばれています)しかありませんでした。
こうした市場で株式を取引するためには売上高や利益水準、財務内容など様々な基準を満たす必要があり、この条件は沿った企業のみが上場しています。
こうした条件は総じて東京証券取引所がもっとも厳しく、地方の証券取引所やジャスダックは総じて緩く、多くの企業はまず、地方やジャスダックなどへの上場を目指し、力をつけた後に、東京証券取引所の第2部、そして第1部に上場しようとしました。
しかし、ジャスダックでも上場するための基準は厳しく、会社が設立してから上場するまでに時間がかかってしまい、株式市場を通じて新興企業の誕生や成長を促すという資本市場の機能が十分発揮できていないという反省が生まれてきました。こうしたムードは株価の低迷が始まったバブル崩壊後、特に1990年代以降、特に顕著になりました。
このため、上場基準をより緩やかにすることで、幅広い企業へ門戸を開き、成長企業の誕生を促進するとともに、投資家にもそうした企業に投資するチャンスを与えようと、新たな市場を作ろうという動きがでてきたのです。
これが東証マザーズであり、当初、米国の店頭市場であるナスダックと提携しナスダック・ジャパンとしてスタートした大阪証券取引所の大証ヘラクレスというわけです。一時、東証や大証以外にも取引所で新市場を作る動きがありました。
こうした新市場では赤字会社でも有望であれば上場できるなど、より緩やかな基準が採用されました。市場が異なることで、投資家もそのリスクを意識できるというメリットがあるということです。
ただ、新しく生まれた市場にしても、従来のように取引所、特に東証の「二軍」的な役割に甘んじるのではなく、成長力のある有力企業が取引される市場としてその存在価値を確保しようという動きが高まっています。米国のナスダックにはあのマイクロソフトなどが上場しており、決してニューヨーク証券取引所の二軍ではないのです。
米国ではニューヨーク証券取引所とナスダックの間では上場企業を奪い合う競争が繰り広げられていますが、日本でも証券取引所とジャスダックやヘラクレスなどの間で、今後、競争がし烈になる可能性があります。