ストックオプションとは株式をあらかじめ決められた価格(行使価格)で買える権利のことです。
その価格はその時々の市場価格で決められ、権利を行使するまで数年の禁止期間が置かれるのが一般的です。通常、自社株を対象としており、経営への参画意識を高めて能力を十分に発揮するためのインセンティブ(動機づけ)として、経営者や取締役、従業員に、報酬などの形で提供されることが多いようです。
一例を挙げましょう。
ある従業員が1株100円で買えるというストックオプションを企業から与えられ、数年後に勤務先の株価が150円になったとします。
この従業員がストックオプションを行使して1株100円で勤務先の株式を入手し、すぐに市場で売却すれば1株当たり50円の利益を得られることになります。
株価が上昇する利益が従業員に報酬として与えることになるため、従業員のやる気が増し、生産性が向上する可能性が高くなるというわけです。1990年代以降、株価が急ピッチで上昇してきた米国では、数多くの企業がストックオプションを導入しています。
ストックオプションには現金を使わずに従業員に対して報酬を支払えるという利点もあります。
人件費負担が軽くなれば、その分、利益水準が上がるので株価が上昇します。また、権利行使をする従業員に渡すために企業は時々市場から自社株を買い上げますので、これは需給面で株価を上昇させます。株価が上昇すれば、従業員は現金での報酬よりもストックオプションをより好むようになりますので、企業の利益率はさらに高まり、株価を押し上げるわけです。
うまく回転すれば、株高が株高を生む仕組みともいえます。
しかし、いったん相場全体が冷え込むとこの仕組みは逆回転し始めます。従業員は現金での報酬を求め、企業収益は押し下げられます。それが株安につながり・・・という流れです。情報技術(IT)バブルが崩壊した後、米国企業にはこうしたストックオプションの副作用に苦しんでいる企業も多いようです。