1. いま聞きたいQ&A
Q

「MM銘柄」とはどんな銘柄ですか?

「MM銘柄」とは、「マーケットメイク銘柄」のことです。「マーケットメイク」とは、取引所における株式の売買方式の一種を指し、投資家の売り注文、買い注文に対して「マーケットメイカー」として届けている証券会社がその注文の相手方となって売買を成立させる方法です。現在、マーケットメイク方式は国内ではジャスダックだけで採用されており、ジャスダックに上場する973銘柄のうち223銘柄がマーケットメイク方式で売買されております。

マーケットメイク方式を理解するには、それと対になっている通常の売買方式と比較すればわかりやすいと思います。通常の方式は「オークション方式」と呼ばれ、東証1部をはじめ通常の証券取引所、およびジャスダックのマーケットメイク銘柄以外の銘柄はすべてオークション方式で売買されています(ジャスダックでは「オークション方式」と「マーケットメイク銘柄」を併用しています)。

「オークション方式」は、取引所というひとつの場所にすべての売り注文と買い注文を集中させ、顧客からの注文を競わせる形で約定(やくじょう)を成立させる方法です。

ある銘柄の売買を考えた場合、800円で1,000株買いたい人と、790円で2,000株買いたい人が取引所にやってきます。その一方で、同じ銘柄を 800円で1,000株売りたい人と、900円で2,000株売りたい人がいるとします。このような場合、買いたい人の中では、他の人よりも高い値段で買いたい人が優先されます。同様に売りたい人の中では、他の人よりも安い値段で売りたい人が先頭に立つことになります。

こうして1,000株の売り注文と買い注文が、800円という値段で売りたい人と買いたい人の意見が一致しました。そこで初めて1,000株の約定が成立します。絵画のオークションのように、買い手と売り手が競い合いながら値がつけられるため「オークション方式」と呼ばれます。ここでは証券会社の役割は、売りたい人と買いたい人の間に立って売買注文を仲介するだけです。

これに対してマーケットメイク方式は、ある銘柄を買いたい人、または売りたい人の注文の相手方として証券会社が介在する売買方法です。注文を仲介するのではなく、実際に証券会社が売買の相手方になる方法です。そこでマーケットメイカーとして取引所に届け出ている証券会社は、投資家に対して「この値段なら売買に応じてもよい」という価格と株数をいつも提示しておかなければなりません。

マーケットメイク方式は「流動性を確保する」という点に最大の特徴があります。ジャスダックには毎月何社ものベンチャー企業が上場します。そのような成長途上にある企業は、会社の規模が小さく流通している株数も少ないために、投資家がいつもで希望するときに希望する株数だけを売買できるほど十分な流動性が確保されているとは言えないケースもあります。マーケットメイク方式を採用していれば、売買の相手方に証券会社が必ず介在するために、小さな会社でも十分な流動性が確保されることになります。

ジャスダックは1998年12月よりマーケットメイク方式を導入しました。当時は長銀や日債銀に公的資金が注入され、日本の金融市場初めて事実上の国有化が実施された時で、日本はまさに不景気のどん底にありました。上場企業が次々に倒産する金融危機の真っ只中でもあり、あらゆる株価が値下がりし、東証全体の1日平均の出来高は5億株を割り込み、売買代金も4,000億円を下回るというところまでいきました。小型株の多いジャスダックは特に売買が成立しにくくなり、極端に出来高が減少するという銘柄が続出しました。

そこでジャスダックは市場活性化策の一環としてマーケットメイク方式を導入したのです。アメリカのナスダックで行われている手法を参考にして、必ず売買の相手方に証券会社が入ることで最低限の流動性を確保しようと考えました。流動性の確保以上に「売り気配」と「買い気配」が立つようになったことが、何よりも投資家心理に明るさをもたらしました。オークション方式では、誰もが売りたいと考えている限り買いの気配値は立ちにくくなってしまいます。

「マーケットメイク銘柄」に指定されるには、当の上場企業からその旨の申請が出されることが条件となります。その上で4社以上の証券会社から気配値を提示する「マーケットメイカー」になるとの届出が出されて、初めてジャスダックはマーケットメイク銘柄に指定します。新規に上場してくる会社が上場初日からマーケットメイク銘柄になることも可能です。

なお、マーケットメイク銘柄にはストップ高、ストップ安の値幅制限がありません。これはマーケットメイク方式の主眼が「流動性を確保する」という点におかれているためで、そのためにどうしても売らなければならない(どうしても買いたい)という事情がある時にはびっくりするような値段がつくこともあります。売買の相手方に立つ証券会社のことも考慮されています。値幅制限がない代わりに「サーキットブレイク制度」が設けられています。これは価格が一定の割合(上下30%)まで動くたびに売買を一時中断して(15分間)、投資家に現在の市況の状態を周知させる期間を与えています。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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