1. いま聞きたいQ&A
Q

「元切り上げ」とはどういうことですか?またその背景など教えてください

は中国の通貨ですが、ドルに対する為替レートがほぼ固定されています(1ドル=8元強)。日本の円は、ドルに対する価値がマーケットで日々決められており、日本経済と米国経済の力関係などによって変動します。一方、中国の元は、国家が決めた為替レートで固定されているわけで、中国経済と米国経済の力関係が変化することによって、実力以上に割高、もしくは割安になる可能性があります。

そして、最近の中国経済の高度成長によって、元の対ドル為替レートが割安になっているのではないかという批判が米国などから高まってきており、「元の固定レートを中国経済の実勢にあうように上昇させよ」という切り上げ論が強まっています。全米製造者協会は元の対ドルレートが40%割安、つまり本来であれば1ドル=5元前後であるべきだという主張をしています。

元が割安だと、中国企業が輸出する製品の価格(ドルに換算)が国際的にみて非常に割安になります。そのため、割安な中国製品が米国や日本などの市場にたくさん入ってきて、そうした製品を作って販売している米国や日本国内の企業が苦戦を強いられています。だから、全米製造者協会のような製造業の団体が元切り上げを主張しているわけです。それに加えて、米国では割安な中国製品の流入が、継続的な物価下落(デフレ)の原因になるのではないかとの見方もあり、政府も中国に対する元切り上げ圧力を強めつつあります。日本でも中国製品は多く輸入されていますので、元切り上げがさらなるデフレの進行を食い止めるのではないかと期待する専門家もいます。

一方、元切り上げ論には一筋縄でいかない面があります。為替レートが割高か割安かという判断は、通常「購買力平価」という考えが用いられます。「購買力平価」とは、国際的に取引される製品の価格が国内(この場合は中国)と外国との間で等しくなるような為替レートなのですが、実際に比較するための個別製品の価格データを全部そろえることは事実上困難で、一部簡略した方式で計算するため、割安度合いについても計算する機関によって大きく幅が出ているのです。全米製造者協会は「40%」ですが、日本の財務省は「14%」と割安度合いを算出しています。もちろん、中国側も同じ論理を使って、必ずしも割安ではないと主張しているわけです。

また、元切り上げ論には異論もあります。9月14日の日本経済新聞朝刊15面「大機小機」は、中国の経常黒字がどんどん膨張しているわけでもないことなどから、「きわめて根拠が乏しい」と断じています。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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