1. いま聞きたいQ&A
Q

資産運用に求められる「金融リテラシー」とは、どのようなものですか?

金融に精通しても資産運用がうまくいくとは限らない

私たち一般個人が資産運用で成果を上げるには、その道具である金融商品に関して、ある程度の知識や経験が必要といわれます。最近では、金融リテラシー(金融に対する理解度や活用能力)の重要性を説く声も増えてきました。投資先進国として名高い米国でも、サブプライムローン問題などへの反省から、オバマ大統領が自ら音頭をとって国民の金融リテラシー向上に乗り出しています。

これは裏を返せば、私たちが金融について理解し、金融商品を使いこなすことが非常に難しいことを意味します。その理由として、2つの問題が考えられそうです。

  • (1) 金融市場や金融商品の種類が多いこと
  • (2) 金融市場や金融商品の使い道(機能や性能)が数字でしか表せないこと

(1)に関しては、例えば株式ひとつをとってみても、まず個別株を買うのか、市場全体(株価指数)を買うのかという選択肢があります。同じ日本株でも、大型株と小型株では値動きなどの特徴が異なってきます。さらに海外の株式という選択肢もあり、そこでも先進国と新興国の株式では特徴が異なります。投資信託にいたっては、数が多すぎるかもしれません。

(2)に関しては、市場や商品ごとのリスクとリターンを表す標準偏差に始まって、株式の割安さや収益性を示す指標、長期投資や分散投資の効用など、私たちは実にさまざまな数字と向き合い、その意味を理解しなければなりません。さらには金融商品や金融機関ごとにまちまちな手数料なども、資産運用にあたって考慮する必要があります。

それでは、金融市場や金融商品について一つひとつ理解を深め、金融にまつわる数字をつぶさに比較・検討していけば、資産運用はうまくいくのでしょうか。残念ながら、そうとも限りません。(1)と(2)の問題に精通している金融のプロでさえ、とくに長期間の運用で思い通りの成果を上げるのは至難の業です。金融の将来はおそらく誰にも予測できません。だからこそ金融の世界では、過去のデータをもとに将来の姿をできる限り類推する確率・統計学が重視されているわけです。

人生において資産運用や金融をどのように位置付けるか

私たちにとって最も重要な金融リテラシーとは、実は「私たちの内側」にあると思われます。私たちはまず、資産運用に絶対がないことや、いかに予測のできないものであるかということを、しっかりと認識する必要があります。そのうえで、自分の人生という大枠のなかで資産運用というものをどのように意味付けるか、位置付けるかを考えることが大切ではないでしょうか。

自分自身にいくつかの根源的な問いをぶつけてみましょう。

● あなたにとって、資産運用は本当に必要なものですか。
言い換えれば、「あなたの人生には、そんなに多くのお金が必要ですか」という問いになります。例えば自分の暮らしぶりを見直すことで人生の改善が可能ならば、無理してよくわからない世界とかかわる必要はないのかもしれません。自分には合わない、自分には必要ないと思ったら、資産運用を一時的に休んだり途中で降りたりすることを考えてもよいのです。

● あなたにとって、資産運用を急いで始めることは大切なことですか。
それより毎月少しずつでも倹約して、資産運用の原資を増やしていくことが先決かもしれません。金融のプロは収益率の高さを追求しますが、私たちが資産運用で基準とするのは収益率のレベルではなく、具体的な金額です。同じ金額の獲得を目指す場合には、原資が多いほど保守的な運用、すなわちリスクの低い運用が可能になります。

● あなたは資産運用において、金融の常識を信じられますか。
長期的にみて、業績が悪い企業の株価が上がる可能性は低いでしょう。逆に言えば、どれだけ経済成長率の低い国であっても業績の良い企業の株価は、程度はともかく上がる確率が高いということです。また、将来的に「預貯金+α」のリターンを現時点で確定できるという意味では、国債の持ち切り(満期まで保有すること)はひとつの資産運用法ということができます。問題は、国が元利金の償還という約束を破らないという条件がつくことと、自分がそのリターンで満足できるかという点です。

ここに例として挙げたのは、私たちの資産運用に対するスタンスを考え、決定するために必要な、いわば自分との対話です。こうした対話をさまざまな観点から、より多く設定してみることが、金融リテラシー向上の第一歩になると思われます。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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