1. いま聞きたいQ&A
Q

より安全で安心な資産運用の方法があれば、教えてください。

運用の結果にも途中経過にも、安全や安心はあり得ない

資産運用における「安全」や「安心」とは、どのような状態を指すのでしょうか。私たち一般個人にとって、それは主に以下の2つだと考えられます。

  • (1)将来的に資産の価値(金額)が減らないこと、あるいは資産運用の目標額を下回らないこと
  • (2)運用対象となる株式や債券などの価格変動率(価値が上下にぶれる幅)が、できるだけ小さいこと

(1)は、つまるところ、結果論です。将来の運用結果は誰にも予測できないし、管理することもできません。多くの人にとっては、「将来=資産をお金に換える時期」がいつなのかということさえ、明確ではないでしょう。本当にお金が必要な時が来たら、元本が割れたとか、目標を達成していないとか言っている余裕もないはずです。

自分の将来とは、かように曖昧で、想定できないものです。そんな将来へ向けた資産運用に安全や安心を求めるのは、運用結果を自分の思い通りにしたいという願望や、思い通りにできるという幻想が私たちにあるからです。資産運用は想定できない結果論だからこそ、できるかぎり余裕資金で行うべきであり、逆にあらゆる事態を想定しておくべきでしょう

(2)は、運用の途中経過にまつわるもの。一見すると、運用に安定感を求めているようですが、実際には資産価値が大きく下落する恐怖から逃れたいという願望の方が強いのではないでしょうか。ここ数年、世界中で株式などの相場がたびたび大きく下落したことにより、私たちのなかで下落への過剰な意識が芽生えてしまったと考えられます。

運用対象の変動率が低ければ、資産を大きく増やすことはできません。変動率のうち、上昇だけが高くて下落は低いという運用対象はあり得ません。私たちが上昇だけを享受して下落は避けるなどという芸当も現実には不可能です。資産を大きく増やしたければ、運用の途中で大きな下落を経験する恐怖は、何とか克服しなければならないわけです。

国際分散投資で少なくとも元本割れは避けられる

資産運用において100%の安全や安心を得るのは無理だとしても、不安や恐怖を少しでも解消することはできないだろうか――。こうした個人投資家のニーズに対するひとつの回答として、これまで国際分散投資が有効といわれてきました。国際分散投資では、日本の株式と債券、外国の株式と債券の4資産に25%ずつ均等に投資して、将来のあらゆる事態に備えるのが基本になります。

4資産にインデックス(市場平均)をあてはめた試算によると、4資産均等投資を毎月末にリバランス(保有資産の入れ替え)を行いながら10年間続けた場合、少なくとも元本割れは避けられることが分かっています(※)。「1969年~79年」から「2001年~2011年」まで33回あった10年間のうち、どの10年間をとっても元本割れがないというのですから、何とも心強いデータです。(※)イボットソン・アソシエイツ・ジャパン調べ

資産価値が下落する恐怖を軽減する方法として、「損切りルール」の導入も効果的といわれます。例えば日本株などの運用資産が投資した時点から10%まで下落したら、そこで強制的に売却・換金するというルールを自分で決めておきます。いわば市場から一時的に退却することで、相場下落によるダメージを最小限に抑える方法です。

損切りルールに従って実際に資産の一部を現金化した場合、将来に向けて運用を続けるためには、そのお金をどこかで再び投資に回して、確定した損失の挽回や損失を上回るリターンの獲得を図っていく必要があります。これは結局のところ、投資に参入する時期と撤退する時期を見極める「タイミング投資」を意味しますが、長期にわたってタイミング投資を成功させることは、投資のプロでも非常に難しいことが知られています。

それならば、目先の値動きや一時的な損失を必要以上に恐れるのではなく、前述した国際分散投資を10年以上の長期で行う方が、はるかに現実的ではないでしょうか。「資産運用で最大のリスクは損失によって心がくじけてしまうこと」という意見もありますが、逆に国際分散投資で「市場に居続ける力」が私たちに問われていると捉えることもできます。

最近では、世界の経済や金融市場が相互依存の度合いを強めたことなどから、各資産の値動きの連動性が高まってきました。今後は国際分散投資が以前ほどには効力を発揮しなくなる可能性も考えられますが、そこは工夫次第だと思われます。長期的な観点から大きなリターンが期待できる新興国の株式や債券を上手に活用することや、有望な個別銘柄による味付けなど、新しい時代にマッチした国際分散投資の在り方を模索する必要があるでしょう。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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