1. いま聞きたいQ&A
Q

「環境銘柄」はこれから、有望と言えるのでしょうか?

米国の参入によって市場拡大が加速する

今年(2009年)以降、「環境」は世界的な株式テーマのひとつとして、従来以上に大きな注目を集めることになりそうです。

きっかけは米国のオバマ大統領が2008年の大統領選挙中に、大規模な景気対策として「グリーンジョブ構想」を打ち出したことでした。この構想では今後10年間で、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーの開発・普及へ向けて1,500億ドルを投資し、500万人の雇用創出を見込んでいます。同じような動きは欧州やアジアでも始まっており、たとえば英国は2020年までに1,000億ドルを投資して風力発電7,000基を建設し、16万人の雇用を生み出す計画です。韓国でも2012年までに約3兆5,000億円を投じてエコカーや再生可能エネルギーの開発を進め、96万人の雇用創出をめざします。

こうした世界主要国による環境・エネルギー分野への重点投資を通じた景気対策は、「グリーン・ニューディール政策」と呼ばれています。世界的な景気後退を受けて、いま各国政府には公共投資などの財政政策をいかに迅速かつ効率的に実行できるかが問われています。そんななか、「無駄遣い」との批判が多い道路やダムではなく環境関連への投資に重点を置く背景には、目先の景気浮揚効果をねらうとともに、国民からの納得も得やすいという事情があるようです。日本でも遅ればせながら、環境省が先ごろ「日本版グリーン・ニューディール構想(仮称)」の策定に着手しました。

地球温暖化への危機感や世界的な水不足、資源枯渇への懸念から、中長期的に環境関連のビジネス市場が拡大することは確実視されています。とくに、これまで環境関連の施策に消極的だった米国が本腰を入れることで、その流れは大きく加速されると思われます。うがった見方をすれば、「環境」が全世界共通の対応課題であると同時に、「IT」「金融」に続く新たな経済成長の切り札として、正式に認定されたということかもしれません。

技術の独自性、ビジネスへの本気度がカギ

それでは、具体的にどのような「環境銘柄」が今後とくに有望なのでしょうか。

実は環境銘柄そのものについて、まだ明確に定義するのは難しいのが実状です。その理由のひとつが「技術面の問題」で、環境への負荷を減らす技術としての有効性や持続性、安定性、コスト面などにおいて本格的な普及が可能かどうか、専門家のあいだでも結論が出ていない分野が多いのです。

たとえば今年、三菱自動車や富士重工業などが世界で初めて量産に踏み切る予定の電気自動車。試算ではガソリン車と比較して走行中のエネルギー効率が2~3倍、CO2排出量は3分の1前後になると言われています。一方で、製造から廃棄まで電気自動車のライフサイクル全般におけるCO2排出量については、まだ正確な評価はできていません。電気自動車ではモーター内の永久磁石に稀少資源が必要となるため、資源不足から本格普及を疑問視する声もあります。

もうひとつ、「収益への寄与度の問題」もあります。あるエコファンド(環境がテーマの投資信託)では環境銘柄の定義として、

  1. (1) 環境負荷の低減を企業活動のなかに組み込んでいる
  2. (2) 環境に配慮した製品・サービスを開発・提供している
  3. (3) 環境技術を中核ビジネスとしている

--という3項目を挙げています。このうち(1)と(2)企業のなかには、確かに環境対策には熱心なものの、環境関連事業の売上比率が低かったり、十分な収益に結びついていなかったりするケースも見受けられます。

環境銘柄と呼ばれる銘柄のなかには、昨年1年間の株価騰落率(2007年末と2008年末の終値ベース)がプラスになったものもあります。たとえば古河電池(+421%)、ジーエス・ユアサコーポレーション(+107%)、エヌ・ピー・シー(+39%)、日本風力開発(+8%)、石井表記(+5%)など。いずれも一般には無名の企業ですが、これらに共通するのは、上記(3)としての性格が強いことです。より純粋な環境銘柄として、その独自の技術力に投資家が高い期待を寄せていることがうかがえます。

一方で、上記(1)(2)には有名大企業も多く含まれます。その将来性を見極めるにあたっては、環境ビジネスに対する「ビジョン(本気度)」と「余力」がカギを握ることになりそうです。新しい環境技術の実用化へ向けて、継続的に大きな金額を設備投資(減価償却)に回していけるか、そのために本業である程度の利益を出し続けられるか、などが注目すべきポイントでしょう。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

バックナンバー2009年へ戻る

目次へ戻る