人びとの生活変化と社会の要請がテーマを生む
株式テーマには、大きく分けて2つの切り口があると考えられます。
ひとつは、人びとの生活様式や嗜好の変化を通じて新たに需要が喚起されたり、需要が従来よりも増加することによって、企業に収益チャンスが生まれるというもの。このケースにあてはまる株式テーマとしては、2007年の春から始まった「団塊の世代の大量退職」や、「資産運用」「セキュリティ」などが挙げられるでしょう。
もうひとつは、国際社会における標準や規範が変化したり、日本国内の政治・経済・社会的な要請によって変化を余儀なくされることにより、企業が新たな収益チャンスを得るというもの。「環境問題」「少子高齢化」「M&A」などが考えられます。
今回はそれぞれの切り口から、とくに一般個人にも馴染みが深く、話題性の大きい株式テーマをひとつずつ取り上げてみましょう。
団塊世代の新たなライフスタイルに注目
団塊の世代が手にする退職金は、総額で50兆円以上と言われています。団塊の世代はもともと活動的なことで知られており、彼らは従来のシニアよりもアクティブで個性的なセカンドライフを送ることが予想されています。団塊の世代によって今後、継続的に需要拡大が予想される分野をいくつか挙げてみます。
- ・旅行(とくにシニア向け)
- ・健康(フィットネスクラブ/健康施設)
- ・セカンドライフ(住宅建て替え・リフォーム/ペット関連)
団塊の世代の大量退職による人手不足から、企業が人材派遣の活用を増やす可能性もあります。とくに熟練の腕が求められる技術者派遣の分野で恩恵を受けるかもしれません。
環境問題では2007年4月、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が地球温暖化の深刻さと、その原因が人間の社会活動にあることを指摘しました。それに先立つ同年2月には、欧州連合(EU)が自動車からのCO2排出量を2012年までに20%削減することを自動車各社に義務づけています。このように具体的な数値目標を設定した問題解決への取り組みは、これから世界中で広がりをみせていくと思われます。おもな環境対策と、その技術開発にかかわる分野をいくつか挙げてみます。
- ・代替エネルギー(太陽光発電/燃料電池/風力発電)
- ・リサイクル
- ・純水製造/水処理
- ・自動車排気ガス浄化装置
団塊の世代の大量退職も、環境問題も、今後数十年にわたって続く可能性がある息の長い株式テーマです。自分のなかでこうしたテーマをひとつ設定することで、株式投資が社会の大きな動きと密接に関係した行為であることを実感できるようになるはずです。