1. いま聞きたいQ&A
Q

NISA(少額投資非課税制度)の今年分の非課税投資枠は使った方がいいのでしょうか?

投資という行為そのものに特典が付くわけではない

今年(2014年)も残すところ1カ月余りとなりました。NISAの年100万円という非課税投資枠をどう活用すべきか、悩んでいる人も多いことと思われます。投資枠は年をまたいで繰り越すことができないため、すでに口座を開いた人もこれからの人も、今年分の非課税の恩恵を受けようと思えば12月末までに投資を始める必要があります。

具体的には、例えば上場株式の場合は受け渡しに3営業日かかるので、12月30日の大納会から逆算すると投資の最終期限は12月25日になります。これから口座を開く場合は、申請書類や住民票などをそろえる時間も含めて口座開設までに3~4週間かかる例が多いことから、できれば今すぐにでも準備に取りかかりたいところです。

ただし、ここまできて焦りは禁物です。今最も重要なのは、自分にとって今年中の投資が本当に必要なのかどうか、しっかり検討することではないでしょうか

例えば今年すでに口座を開いた人のケースを考えてみます。NISAでは今年から2023年までの10年間に、非課税の対象となる投資を年100万円まで行えるチャンスが10回めぐってきます。今年中に投資しておかないと、せっかくのチャンスを1回分みすみす逃して損するように感じるかもしれませんが、それは誤解です。

NISAにおける非課税の恩恵とは、あくまでも投資によって収益が出た場合にもたらされるものであり、投資という行為そのものに特典が付くわけではありません。そもそも今年に口座を開いたということは、その時点で多かれ少なかれ投資の意思があったはずですが、それがなぜ今まで延び延びになってしまったのでしょうか。

もしも投資の対象やタイミングに踏ん切りがつかなかったという場合は、その自分が抱いた感覚を大切にすべきだと思います。あなたにとってはまだ投資の機が熟していないのかもしれません。そのような状態で投資の時期を無理やり「今年中」に縛ることは好ましくありません。

制度改革や相場環境を見極めてからでも遅くない?

もうひとつ、当初から500万円をNISAで長期運用しようと決めている人のケースを考えてみます。今年から2018年まで5年連続で投資枠を使って、なおかつそれらを毎年100万円の範囲内で19年から23年までの投資枠に順次移管していくと、結果として500万円すべてを10年間にわたってNISAの非課税枠で運用することが可能になります。投資のスタートが来年以降にずれ込むと、投資資金の一部が10年の運用期間から外れるため、長期運用としては不完全な形になってしまいます。

しかしながら、そのような人の場合でも2つの観点から、口座開設や投資をあえて急ぐ必要はなさそうです

ひとつは、NISAの制度改革が徐々に進んでいきそうなこと。来年からは投資家が口座を開設する金融機関を毎年選べるようになります。さらに金融庁では2015年度税制改正の要望として、非課税枠を現行の年100万円から年120万円に引き上げることや、年80万円の非課税枠で親や祖父母が20歳未満の子どもや孫の名義で開く「子ども版NISA」の創設も盛り込んでいます。

これらが実現した場合、例えば夫婦と子ども2人の家族では、1世帯あたりの非課税枠が現在の年200万円(100万円×2人)から年400万円(120万円×2人+80万円×2人)まで倍増することになります。また、子ども版NISAの創設を機に制度の恒久化を期待する声も上がっています。非課税の投資枠や期間が変われば、NISAの活用法も変わってくるわけで、本格的に投資を始めるのはそうした諸条件が整ってからでも遅くはないかもしれません。

2つ目の観点は、現在の相場環境がかなり難しい局面にあるということ。今年10月31日に日銀が発表した追加金融緩和を受けて、市場では株高と円安が急速に進んでいますが、今回の株高は額面どおりに受け取りづらいのが実情です。同日には日本の公的年金資産を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、株式への投資比率を倍増する方針を発表しており、日銀の緩和効果と合わせて当局が株価を操作する「官製相場」の懸念が高まっているからです。

ここにきて来年10月に予定されている消費増税の先送りや、年内の衆議院解散・総選挙も現実味を帯びてきており、市場がそれらの思惑にとりあえず株高で反応したという側面も否めません。NISAで株式への投資を考えていて、個別銘柄や株式投信などの投資対象がまだ具体的に決まっていないような人は、意図せぬ高値づかみを避けるために、日銀の緩和効果の持続具合や政治情勢といった本来の株価形成にとっては二義的な要因の動向を、しっかり見極めてから投資に臨むのが妥当ではないでしょうか。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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