1 株式って何だ ~「お金を集めてくる」というのが株式のお仕事
これから君たちが学んでいこうとしている「株式」とは、一体何なのか?・・・一言でいうとそれは、「企業がお金を集めるための道具」なんだ。
新しい工場を建てる、コンピュータシステムを買い替えるなど、会社を運営していくには何かとお金が必要だ。大きな事業をやろうと思えばそれだけ大きなお金が必要になってくる。企業はお金を集めてくる方法を考えなくてはならないね。
たとえば君が会社をつくったとすると……
企業のお金集めの代表的な方法に、「銀行から借りる」というのがある。ただし、どんな企業でもお金が借りられるとは限らない。
たとえば君が、ゲームが好きで、コンピュータプログラムにも詳しいとしよう。「僕なら、画期的なゲームが作れる!」と信じて、君はたった今、会社をつくると決めた。しかし、さっそく君が銀行に行って「僕の会社にお金を貸してください。僕らのゲームが大ヒットしたらそのときにお金は返します!」と言っても、まず貸してはくれないだろう。
借りたお金は、約束した時期に返さなくてはならない。どんなに自信があっても、成功する保証がない企業に、簡単にお金は貸してはくれないんだ。
ではどうやってお金を集めたらよいのだろう?
オーナーを募集するというアイディア
そこで君は別の方法を考えた。
「僕の会社のためにお金を出してくれませんか?もうかったお金は、出してくれた金額にあわせて皆さんに配分します。ただし、ヒットしなかったらお金は返せないので、そのときはあきらめてください」という手紙を街中の人に出すとい方法だ。そうすれば、ゲームの才能に期待して、何人かはお金を出してくれるかもしれないからだ。
実は、このように「世の中のたくさんの人々からお金を集める」というのが、株式の考え方なんだ。
株式というのは、お金を出してくれた人に渡す証明書のようなものだ。株式を発行してお金を集める会社を「株式会社」という。
株式を発行し、たくさんの人が株式を買うことによって集めたお金が「資本金」、つまり事業の元手のお金となる。 これは、銀行から借りたお金と違って、原則として返す必要のないお金だ。
会社を経営する人にとって、「返さなくていい」というのはとても重要な点なんだ。つねに一定のお金を確保して、仕事を続けることができるからだ。
株式と引き替えにお金を出資した人たちを「株主」というんだけど、その人たちは、お金を出したのと引き替えに、その会社に対して一定の権利を持つようになる。そして、会社があげた利益に応じて、分け前を受け取ることができる。
株主は、会社に出資したお金を返してもらえない代わりに、株主をやめようと思ったときとか、お金が必要となったときには、ほかの人に株式を売り渡す自由が認められている。
こういう決まりがあることで、株式を買うこと(要するに「投資」ということ)が誰でも気軽にできるようになっているんだ。