1. いま聞きたいQ&A
Q

株価が上がっても企業に直接資金が入るのではないなら、株価の値上がりはステータスにしかならないのですか。また、さらに株式を新たに発行する場合、たとえば額面50円、株価500円だった場合、差額の450円は誰に入るのですか?

最初のご質問については、Q&A「株価が上がると企業にはどんなメリットがあるのですか」をご覧ください。決してステータスだけではありません。

後半の質問ですが、基本的に500円すべてが株式を発行した企業のものになります(証券会社などに支払う手数料などは別です)。こうして、株式を発行し資金を調達することを増資と言い、会社はこのおカネを使い、新しい工場を建てたり、機械を買ったり、新たに店を出したりします。銀行からの借入金の返済に充てることもあります。もちろん、すぐに投資をしたり、借入金の返済をするわけではありませんから、しばらくは銀行預金になったり、債券や投資信託などで運用するケースもあります。バブル期には株式など有価証券や不動産に投資するために、増資した会社もありました。

これが具体的なおカネの流れです。では、これを会社の資産の内容や状態を示す帳簿(貸借対照表=バランスシート)から、説明しましょう。

貸借対照表では、保有する預金や有価証券、機械や工場などの設備、不動産などの「資産勘定」(総資産、左側に記載)と、銀行などからの借入金や債券を発行して調達する「負債」(他人資本)と株主から調達した資本金、利益の蓄積などからなる「資本」(株主資本)の合計である「負債・資本勘定」(使用総資本、右側に記載)がバランス(均衡)しています。
「資産勘定(総資産)=(イコール)負債・資本勘定(使用総資本)」ということです。
会社は負債や資本のかたちで外部から調達した、右側のおカネ(負債・資本勘定)を使って、左側にある資産(総資産)を保有しているということです。

質問に戻りますが、500円で新しく株式を発行した場合、会社は通常、半分を「資本」の部にある「資本金」に計上し、残りを資本準備金として「法定準備金」に計上します。
いずれにせよ、資本が増えることになります。借入金など負債はいずれ返さなければならない他人資本であるのに対して、こうして株式を発行して集めたおカネやこれまでの利益の蓄積などを合計した「株主資本」は返す期限のないおカネであり、会社にとってみれば、株主総会の決議さえあれば、自由に処分できるおカネです。このため、株主資本が多ければ、それだけ会社の経営が安定することになります。株主資本と他人資本の合計額(つまり使用総資本=総資産)に占める株主資本の比率を「株主資本比率」と呼んでおり、この比率が高いほど会社の安定性が高いとされています。ご質問のケースは、時価発行増資と呼ばれるものですが、これは額面での増資に比べると、少ない株数で多くの資金を調達でき、株主資本の充実に役立つというメリットがあります。

ただ、株主は株式を買うことで株主資本として会社におカネを預けるかわりに、会社に利益をあげてもらって、配当を受け取ることを期待しています。株主資本が増えても利益が増えなければ、株主は預けたおカネに見合った分配を受けられないということです。
増資で得た資金を経営者がきちんと活用しているかどうか、チェックすることが必要です。税引き利益を株主資本で割って算出する株主資本利益率(ROE)という指標がありますが、この割合が高いほど株主から預かったおカネを会社が有効に活用しているということになります。会社の収益力を図る指標として使われ、株価などにも影響しています。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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