1. いま聞きたいQ&A
Q

株主優待、株式分割などの権利確定日を過ぎたら、すぐに売ってしまっても権利は残るのでしょうか?

3月末が近づいて、株式市場では今期末の配当金、株式分割、株主優待に対する関心が高まっています。特に今年は、3カ月後に開催される株主総会への注目度も例年以上に高いと考えられます。結論から述べれば、今回のご質問に答えは「(すぐに売ってしまっても)株主の権利は残ります」というものになります。

株主の権利を得るには、決算期末の時点において株主であることが必要です。3月決算のケースで言えば、「3月31日の時点」で株主であれば、株主としての権利はすべて得ることができます(3月31日は株主の権利が確定する日という意味で「権利確定日」と呼ばれます)。

話を進める前に、株式の売買における約定(やくじょう)と受渡(うけわたし)について述べておきます。株式取引のルールでは、株式の売買とその決済との間には時間的な差が存在します。株式を買ったり売ったりした日が約定日、その代金を決済するのが受渡日です。約定日を含めて4日目が受渡日になり、たとえば月曜日に株式を買った人は、4日後の木曜日までにその買い付け代金を証券会社に支払います(ネット証券の多くは、購入前に入金を済ませた金額の範囲内で株式の買い付けを認める「前受金」制度を採っています)。

本論に戻ります。ここでは3月末決算を採用するA社を例にとって説明します。A社の権利確定日である3月31日に株主になっているためには、受渡ベースで3月31日までにA社の株式を買っていなければなりません。「受渡ベースで3月31日までにA社の株式を買っている」ということは、3月31日までに決済を済ませているということです。

そして例外的に、権利確定日に受渡日が到来する約定に限っては、5日目受渡のルールが適用されます。これは通常の4日目受渡ルールの唯一の例外と思ってください。今年(2005年)の場合で言えば、3月25日(金)約定の受渡日は3月30日(水)で、これは通常の4日目受渡です。そして翌3月28日(月)約定の受渡日は4月1日(金)で、こちらは例外的な5日目受渡です。つまり3月決算を採用する企業の株式は、3月31日(木)の1日だけは受渡が行われないことになります。

A社は今期末の株主に対して大幅な増配を発表しました。すでに以前からA社の株主であるBさんはこの増配を受け取るのに何の問題もありません。しかし、CさんはまだA社の株主ではありません。

A社が大幅な増配をするというニュースを聞いて、CさんはA社の株主になって配当をもらってみたくなりました。それにはCさんは、「受渡ベース」で3月31日までにA社の株主にならなければなりません。

今年(2005年)の場合で言えば、Cさんは3月25日までにA社株を購入していれば配当を受け取ることができます。1日遅れて3月28日に買ったとしても、受渡日は4月1日になってしまうためA社の株主としての権利は得られません。

反対にCさんは3月25日(金)にA社株を買って、3月28日(月)にA社株を売ったとしても、A社の配当金はもらえます。受渡ベースで3月31日の権利確定日をまたいでいるからです。配当金だけでなく、株主優待や株式分割の権利も得られます。そればかりかCさんは、6月ごろになるとすでに売ってしまったA社から株主総会の案内が送られてくることになります。

株主としての権利を得られる(得られない)という意味で、3月25日は「権利付き最終日」、3月28日は「権利落ち日」と呼ばれています。

ご質問の回答としてはここまでですが、もう少し実務的なことを述べます。一般的に権利落ち日の株価は、配当金の分だけ値下がりするのが普通です。権利付き最終日(3月25日)のA社の株価が300円、期末配当金が10円だとすれば、権利落ち日(3月28日)の株価は290円(=300円-10円)が権利落ち妥当値になります。

CさんがA社の配当金を受け取れるのは、実際には株主総会が終わってからです。
3月決算を採用するA社の配当金は、6月末以降にもらえます。そのためにせっかくCさんが3月末にA社株を300円で買って配当を受け取る権利を得ても、権利落ち日にすぐに290円で売ってしまっては元も子もありません。A社の配当金が目当てなら、せめて買い値以上に株価が値上がりするまで売却は待つべきでしょう。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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