個別銘柄で見れば株価は結構上がっている
今年(2011年)9月26日の東京株式市場で、日経平均株価の終値が8,374円13銭と、約2年半ぶりの安値をつけました。今に始まった話ではありませんが、日本の株式市場は「上がらない市場」として以前から有名です。日本の株式市場は「上がらない市場」として以前から有名です。日経平均株価は1990年のバブル崩壊から今日まで、平均すると年率5%で下落し続けてきました。
市場平均で見るかぎり、過去20年以上もの中長期にわたって株式を保有しても、ほとんど報われない状況が続いていることになります。そのせいか、現在では日本株に投資する個人投資家の9割が、インターネットを通じた短期売買にいそしんでいるといわれます。
インターネットの短期売買とは、値動きのよい銘柄を短期間で頻繁に売り買いし、いわゆる「値ざや稼ぎ」に徹する方法です。そこで重要なのは、とにかく株価が動くことであり、極端にいえば企業名を知らなくても構わないし、事業内容や成長性などもさほど関係ありません。何とも単純で味気ない作業のように思えますが、株価を横断的・継続的にウオッチするなど、情報処理に膨大な時間と能力を要するため、誰でも容易にできる投資法ではなさそうです。
こうした方法以外に、もはや私たち個人投資家が日本株に投資して収益を上げるチャンスはないのでしょうか。実は、それほど捨てたものでもありません。
例えば東証1部上場企業について、2001年~2010年の株価騰落率を見てみましょう。この10年間に市場平均であるTOPIX(東証株価指数)が約3割下落した一方で、個別の企業では全体の48%と半数近くの銘柄で株価が上昇していました。市場全体が低迷するなかでも、利益成長が株価に反映されて上昇するケースは結構あるわけで、そのような銘柄を選別できれば、短期売買でなくともリターンを上げることは十分に可能です。
反対に、一部の個人投資家の間で人気が高い日本株インデックス(市場平均)への中長期投資には、今後それほど大きな期待が持てないかもしれません。以前にも紹介しましたが、一般に中長期的な株価上昇率は、その国の経済成長率にほぼ一致するといわれています。慢性的なデフレ傾向のもと、GDP(国内総生産)が増えない日本経済においては、株式市場全体の上値は自然と重くなりがちです。
日本の株式市場では割安株への投資が有効か
今は、日本の株式市場は個別銘柄への投資を始めやすい環境にあるといえます。株価の割安さが際立ってきているのです。割安さを示す指標について9月26日現在の市場の平均値を見ると、予想PER(株価収益率)が東証1部・2部ともに13倍台で、PBR(株価純資産倍率)は東証1部が0.91倍、東証2部が0.64倍。いずれの数値も株価が歴史的な割安水準にあることを示しています。
同じく9月26日現在で、個別銘柄の予想配当利回りを時価総額が1,000億円以上の大企業に絞って見てみると、みずほフィナンシャルグループが5.4%、リコーが5.2%、武田薬品工業が4.8%など、こちらも異常といえるほどの高利回り株が続出しています。これは株価が過度に下落して割安になっていることの反映ですが、同時に日本国債10年物の0.975%という利回りと比較すると、利回りの面でも日本株の魅力が大いに高まっていることが分かります。
市場関係者の間では、世界の株式市場のなかでも日本では特に割安株への投資が有効といわれています。例えば日本の株式市場には、単に金融機関のアナリストがカバーしていないという理由で普段から不当に低い評価を受けている銘柄が多く、それらは市場環境が悪化した際にも値下がり幅が限られる傾向が強いようです。他国の株式市場に比べると上場企業の破綻や上場廃止が少ないため、業績不振によって一時的に大きく売り込まれた銘柄が復活するケースも目立ちます。
実際に東証1部上場企業を対象として、1カ月ごとに銘柄の見直しを図りながら、その時どきでPERやPBRが相対的に低い銘柄群に一定額ずつ投資した場合、その投資成果は中長期的にTOPIXを大きく上回ることが、ある試算データによって証明されています。
私たち個人投資家にとって、割安な個別株への投資は大いに期待が持てそうですが、いくつか問題もあります。割安株のなかには、成長性の低さや資本効率の悪さから「万年割安株」に陥っているものがあり、投資にあたってはそれらを避けることが必要です。資金の都合上、投資できる銘柄数には限りがあることも踏まえると、やはり銘柄の選別が重要になってきます。
次回は市場関係者が推奨する手法なども交えながら、個人投資家に適した割安株投資の手法について、具体的に考えてみたいと思います。