IR(インベスター・リレーションズ)とは投資家向け広報活動のことです。企業は、投資家に事業内容や経営ビジョン、業績見通しなどを正確に迅速に伝達することにより、資金調達を円滑に促進することができます。
数年前まで日本企業の多くは「株式持ち合い」でした。すなわち金融機関や大手取引先と相互に株式を保有しあい、他社が経営に関与できないようにしていました。ところが、「失われた10年」の間に、不良債権に苦しむ金融機関が保有株を売却し、一般事業会社も株式保有に効率性を問われるようになり、株式持ち合いが崩れていきました。そこに代わって登場したのが外国人投資家、個人投資家です。特に動きが活発なのが投資ファンドです。投資ファンドは大量に株式を買い付け、企業経営に積極的に参加してきます。最近の例では、米投資ファンドスティール・パートナーズが明星食品に敵対的TOB(株式公開買い付け)を発表するなど、経営権取得を狙うまでとなりました。こういった敵対的買収を防ぐために、上場企業には、さらなる経営効率化と企業価値の向上が求められます。
ここで、多くの上場企業が注目しているのが個人投資家です。個人投資家は1つのニュースに対して様々な投資判断をするため、株価が一方向に動きにくいといわれています。よって個人投資家層を厚くすることにより、経営の安定化を図る、という試みが、今、さかんに行われています。
自社ホームページに投資家向けコンテンツを拡充する、アナリスト向け会社説明会を個人投資家に閲覧できるようにする、個人投資家を対象とした会社説明会を開催する、株主総会をよりフレンドリーなものにする、株主優待を充実させるなど、企業は個人投資家のアプローチに様々な工夫をしています。
個人投資家サイドも、インターネットの普及により、アクセスできる情報量が格段にひろがってきました。中でもインターネットによる適時開示情報の閲覧は、個人投資家の利用が大幅に増えているもののひとつです。業績修正や、事業提携、人事情報など、株価に影響を与えると思われる重要事実がリアルタイムでご覧いただけます。東証のホームページ、日本経済新聞 電子版をご覧ください。
近年、企業は生き残りをかけて、その事業内容を大きく変えています。ライバルと提携する企業、集中と選択でコア事業を変えている企業、新規事業に進出する企業など、変化は早く激しくなっています。ですので、企業はより頻繁に投資家とコミュニケーションを図り、企業の将来性を訴えていかなければなりません。
最近の動きとしては、企業だけでなく、国や地方自治体も積極的にIR活動を展開しています。主体はどこであれ、資金調達を考える者にとって、投資家とのコミュニケーションが不可決になってきている、ということでしょう。