1. いま聞きたいQ&A
Q

地政学リスクとは?

地政学リスク(geopolitical riskとは、特定の地域における政治や軍事的緊張が経済の行方を不透明にするリスクのことです。米連邦準備理事会(FRB)が2002年9月の声明文に盛り込んで以来、市場で広く認識されるようになりました。特定地域での紛争や、世界各地に拡散するテロの脅威が2大要因となっています。

紛争やテロのリスクは企業活動に悪影響を及ぼすうえ、原油価格の高騰や為替相場の乱高下によって投資家の心理を冷やします。2001年9月の米同時テロ以降では、2002年の北朝鮮による核開発や2003年のイラク戦争などで緊張が高まりました。

2006年では、まず、7月5日に北朝鮮のミサイルを発射事件がありました。すべてのミサイルが日本海に落下したため、大きな問題にはなりませんでしたが、5日の東京市場では株式、円ともに売りが先行し、日経平均終値は前日比114円56銭安で引けました。それでも、ミサイル発射が「日本売り」の悪材料にはならないと冷静に見る市場関係者も多く、市場での影響は限定的でした。

これよりも影響力が大きく、まさに今、世界中を震撼させている地政学リスクは中東情勢です。イスラエルのレバノン侵攻、イランの核開発問題は、原油価格を高騰させ、世界経済の先行きを不透明にしています。この中東問題により、米国株式相場が影響を受ければ、日本株も無縁ではありません。

実際、レバノン侵攻後の7月13日の米国株式市場は、ダウ工業株30種平均で100ドル超下げました。これを受けて14日の日本マーケットは、ハイテクや自動車など輸出関連株に売りが先行し、終値は1万5000円を割ってしまいました。

株式市場は先行き不透明で下げましたが、安全資産とされる金は買いが続き、金価格は上昇しました。「有事のドル」も堅調でした。地政学的リスクが高まると、供給不安の思惑から原油相場や安全資産である金への資金流入が強まります。原油など商品相場はドル決済のため、需給面からドル買いにつながりました。

このように地政学リスクは、株式市場、債券市場、商品市場、為替市場すべてに影響を与えます。これからの展開が予測不能なだけに、大きなリスク要因ということができます。国際社会は知恵を出し合い、紛争、テロの解決に全力を注いでいかなければなりません。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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