1. いま聞きたいQ&A
Q

CF(キャッシュフロー)計算書は企業分析に、どのように活用できますか?

営業CFのマイナスは黒字倒産の危険信号!?

企業の財務状況をあらわす決算書として代表的なものが、BS(貸借対照表)とPL(損益計算書)です。大まかに言うと、BSには「企業がどのようにお金を集め、何に投資しているか」(資金の調達と運用)が、PLには「企業がどのように利益をあげているか」(儲けの構造)がそれぞれ示されます。ただし、BSやPLには必ずしも企業における「お金の出入り」が反映されているとは限りません。

PLでは売掛金や買掛金、棚卸し資産(在庫)、減価償却費など、現金の動きをともなわないものも売上や費用として計上されます。例えば、ある6月期決算のメーカーが5月末に売掛手形で製品を販売し、手形を7月末に決済するとしましょう。その販売実績は、PLには当期の売上として組み入れることができますが、実際にはまだ現金が入ってきていません。こうした未回収の現金が多い状態で、7月中旬に借入金の返済期限を迎えるような場合には、その返済資金が足りなくなる恐れも出てきます。

つまり、直近の決算期にPL上では利益が出ているにもかかわらず、企業が資金繰りに行き詰まって経営破綻してしまうケースもあり得るわけです。こうした、いわゆる「黒字倒産」に陥った上場企業は、2008年度(2008年4月~2009年3月)に20社を数えました。

BSやPLでは分からない企業における現金の動きは、CF(キャッシュフロー)計算書によって正確に把握することができます。CF計算書は入金と支払いを基準に計算された、いわば企業の家計簿にあたるもの。「営業CF」「投資CF」「財務CF」という3つの内訳があり、それぞれ以下のような内容を表します。

  • ●営業CF:販売や仕入れなどの営業活動による資金の増減
  • ●投資CF:設備投資や有価証券の売買などによる資金の増減
  • ●財務CF:借入金や配当金の支払いなどによる資金の増減

特に注目したいのが営業CFです。営業CF計算書では、売掛債権や棚卸し資産などの増加額は会計上の最終損益(税引き前当期純損益)からマイナスし、減価償却費などは逆に最終損益にプラスして記載されます。PLでは利益が出ているのに営業CFがマイナスになっている企業は、現金回収の遅れや過剰在庫などの理由から、資金繰りが苦しくなっている可能性があると考えられます。事実、2008年度に黒字倒産した20社のうち、直近とその前の決算期のどちらかで営業CFがマイナスだった企業は18社にも上っています。

各CFの増減パターンから経営状況を推測

営業CFと投資CF、財務CFがそれぞれプラスかマイナスか、その組み合わせのパターンから企業経営のおおよその状況を知ることができます。

例えば営業CFがプラスで、投資CFと財務CFがいずれもマイナスのパターン。本業が好調で現金が増えた(営業CFのプラス)一方で、将来に向けて積極的に設備投資をおこなっており(投資CFのマイナス)、それでも余った現金を借入金の返済や配当金の支払いにあてた(財務CFのマイナス)と考えられます。優良企業によく見られるパターンです。

反対に営業CFがマイナスで、投資CFと財務CFがプラスのパターンは、経営が不調なことを意味します。本業が振るわず現金が減少した(営業CFのマイナス)分を、設備や土地、株式などの資産売却(投資CFのプラス)および、借入金や社債発行などの資金調達(財務CFのプラス)で補ったと考えられるからです。

こうした各CFの増減パターンによる経営状況の推測は、あくまでも一般例にすぎません。より正確に経営状況をつかむためには、各CF計算書に記載されている増減の要因項目と金額をチェックして、「なぜ増減が生じたか」を確認する必要があるでしょう。

さらに3~5期など数年にわたって各CFの増減をチェックすることで、企業の経営戦略とその成否を読み取ることも可能です。例えば、小売業において投資CFのマイナスが続いた後に、営業CFがプラスからマイナスに転じたような場合、「強気の店舗展開が裏目に出た」などの判断を下すことができます。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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