デリバティブについて知っておこう

「天気」や「地震」のリスクを対象にしたデリバティブもある

デリバティブは予期できないような株価や為替相場の変動がもたらすリスクを避けるために開発されたものが多いが、中にはユニークなデリバティブもある。その一つが「天候デリバティブ」だ。

天気の良し悪しは、さまざまビジネスに影響を与える。天候不順が続けば農作物の不作や漁業の不漁につながり、農業・漁業に携わっている人々に大きな打撃になる。エアコンやアイスクリーム、水着などを作っているメーカーは冷夏になると売り上げが減るし、スキー場を経営している会社は暖冬だと困る。雨の日が長く続いただけで外出する人が減り、レストランやテーマパークなどの収入も影響を与えてしまう。

そこで考えられたのが「天候デリバティブ」で、簡単に言うと、天気が原因で起こった損失を埋め合わせてくれる機能を持っている。利用者はまず契約料を払っておき、契約期間中の気温や降水量、積雪量など天気に関するデータが一定条件を満たしたら(例えば一定量以上の雨が降ったら)、補償金を受け取れるという仕組みだ。

天候デリバティブ

これは1997年にアメリカのエネルギー会社が開発したもので、日本では、1999年にスキー用品販売などを手掛ける企業が雪不足リスクを回避する契約を結んだのが、国内の天候デリバティブ第1号だと言われているよ。

天候デリバティブは、自然災害によって損失を被った時にお金がもらえる損害保険と少し似ている。ただ損害保険の場合は、災害などで実際に損害が出たときにしかお金はもらえないし、損害の規模を調査したりするので時間がかかる。天候デリバティブの場合は、天候データがあらかじめ決めていた条件を満たせばお金がもらえるのでその点は便利だといえる。

地球温暖化などの影響もあり、欧米では異常気象による深刻な損害が出ていて、それに対応するための天候デリバティブも定着している。最近は日本でも、ゲリラ豪雨など今までにない気象に関する災害が起こっているので、そのリスクを避けるための天候デリバティブの普及も進んでいくかもしれない。

なお自然災害を対象にしたデリバティブには、このほかにも「地震デリバティブ」などがある。

日野先生からのアドバイス

あらかじめ定められた事象が発生すれば、実際に損害があったかどうかは関係なく支払いが行われる点が、デリバティブと保険の違いです。