デリバティブについて知っておこう

デリバティブの種類「先物」「オプション」「スワップ」

デリバティブはいくつかの種類に分けることができる。まず取引の仕方によって「先物」「オプション」「スワップ」の3つに分けられる。さらに、デリバティブ取引の対象となる商品(原資産)によっても分類できる。

先物取引

ある商品について、将来の一定期間後にいくらで取引するかを現時点で約束する取引を先物取引と呼んでいる。もともとは天候や豊作・不作によって価格が変動しやすい農産物の取引から始まって、現在も、さまざまな農産物の先物取引が行われている。

また、金融商品を対象とした「金融先物取引」もある。ある国の通貨を別の国の通貨に交換する際の為替相場を対象とする「通貨先物」、債券を対象とする「債券先物」、日経平均株価のような指数を対象とした「株価指数先物」などだ。

金融先物取引

オプション

先物取引に似ているが、ある原資産について、将来の一定期間後に、ある値段で取引できる「権利」を売買するのがオプション取引だ。先物取引と同様、為替相場を対象とする「通貨オプション」、債券を対象とする「債券オプション」、株価指数を対象とする「株価指数オプション」などがある。

一定の手数料(オプション料)を払えば「権利」を買うことができる。売買するのはあくまで「権利」なので放棄することもできる。(オプション料は戻らない。)不動産の契約などで見られる「手付け金」の考え方に似ている。

オプション

例えば、キミが貿易会社を経営しているとしよう。3カ月後に1万ドルの代金を受け取る予定だ。いまの為替相場は1ドル=100円だが、変動がかなり激しくて先行きが読めないこういうときに、通貨を対象とするオプション取引を利用する。「今から3カ月後に、1ドル=100円でドルを売って円を買える権利」を「1ドルあたり1円のオプション料を払って買う」、といった取引だ。

3カ月後に、もし実際の相場が1ドル=90円になったとしたら、キミはさっきの権利を行使した方がトクだ。1ドル=100円で1万ドルを売れば、オプション料を差し引いて99万円が手に入る。実際の相場に比べて9万円トクになる。

また実際の相場が1ドル=110円になった場合は、キミはさっきの権利を放棄した方がトクになる。1ドル=110円の相場で1万ドルを売れば、110万円が手に入るからだ。

ただしこの場合、払ったオプション料1万円は無駄になる。相場の動きを見て、トクになるときだけ権利を行使して、損になるときは権利を放棄できるのがオプション取引の大きな特徴だ。

スワップ

スワップとは「交換する」という意味で、デリバティブにおけるスワップ取引は性質の異なる支払い義務などを交換する取引をいう。金利を対象とする金利スワップ、異なる通貨を対象とする通貨スワップなどが代表的だ。

例えば、ここに銀行からお金を借りているA社とB社があるとしよう。A社が銀行に支払う金利は「固定金利」、B社のほうは変動金利だ。

またA社は「これから金利はきっと下がるはず」と考えていて、B社は「金利がずっと変わらない方が安心だ」と考えている。

スワップ

こういう場合に、金利のスワップ取引を利用する。A社がB社の代わりに変動金利を、B社がA社の代わりに固定金利を支払う契約をするわけだ。(実際には差額分だけ定期的に決済すればいい。)

金利スワップを利用した場合

以上は、原資産の価格変動リスクを回避するためのデリバティブだが、企業が経営破綻するかもしれないリスクを対象とした「クレジットデリバティブ」、天候の不確実性に対応するための「天候デリバティブ」などがある。

日野先生からのアドバイス

先物取引の場合は有利不利にかかわらず約束した価格で取引しますが、オプションの場合は、買い手は不利な価格の時は権利を放棄できます。