デリバティブについて知っておこう

個人でデリバティブを投資に利用するには?

デリバティブは、に紹介したように「ヘッジ」と「レバレッジ」の2つの大きな特徴を持っていて、資産運用の有効な手段として、投資の専門家である機関投資家を中心に活発に利用されている。
もちろん、デリバティブは個人の投資家も利用することが可能だ。いくつかの方法があるが、代表的なのは次の2つだ。

指数先物、指数オプションを利用する

1つ目は、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)など株価指数を対象としたデリバティブ商品を利用する方法だ。具体的には、先物取引の商品として日経225先物、TOPIX先物、東証マザーズ指数先物などが、オプション取引の商品として日経225オプション、TOPIXオプションなどがある。

株価指数を対象としたデリバティブ商品

いずれも大阪取引所に上場しているので、株式投資の場合と同じように証券会社を通じて利用できる。なおデリバティブ取引には、株式用の口座とは別に専用の取引口座をつくる必要がある。複雑な投資手段なので、口座を開設するときには、投資に関する一定以上の知識や経験が求められることが多い。

デリバティブの取引では「証拠金」を証券会社に差し入れることが必要だ。証拠金の何倍もの規模の取引ができるのはデリバティブの大きな魅力だが、相場などの先行きを見誤ったときの損失も大きい。
そこでそうしたリスクを避け、個人でも利用しやすいように、取引単位や証拠金を通常の10分の1に小口化した「日経225mini」「ミニTOPIX先物」といった商品もある。

デリバティブを組み込んだ投資信託などを利用する

2つ目は、運用商品の一部にデリバティブを組み入れた投資信託や、デリバティブを組み合わせた銀行預金などを利用する方法だ。

デリバティブを組み入れた代表的な投資信託に、「ブル型投資信託」と「ベア型投資信託」がある。ブル型とは、相場が上向いているときに、その上昇幅以上の投資収益が出るようにつくられた投資信託だ。ブル(Bull)とは雄牛のことで、角を下から上へと突き上げる動作のイメージからこう呼ばれる。
一方、ベア型とは相場が下向いているときに、投資収益が出るようにつくられた投資信託で、熊(Bear)の前足の爪を上から下へ振り下ろすイメージからこう呼ばれる。どちらも、先物取引やオプション取引を活用することで、目標とする投資収益が得られるように設計されている。

ブル型とベア型

大きな投資収益が狙える一方で、当然ながらリスクも高い(投資信託のRR分類では、ブル型・ベア型はRR5にあたる)。

また、預金とデリバティブを組み合わせた「仕組み預金」という商品もある。為替オプションや金利オプションを利用して、普通の預金より金利を高くしているのが特徴だ。しかしその半面、為替動向などによっては元本割れになってしまうこともある。

株価や金利が低迷しているとき、通常の銀行預金や株式投資、投資信託などでは資金を増やしにくい。そのため、個人の投資家でも各種のデリバティブ商品や、ブル型・ベア型投資信託、仕組み預金などを利用する例が増えている。
しかし繰り返し述べたように、いずれも仕組みは複雑で、ハイリスク・ハイリターンの商品だ。メリットはもちろんデメリットもしっかりと把握してから利用することが大切だ。

日野先生からのひと言

余談ですが、ニューヨーク証券取引所の近くにCharging Bull(チャージング・ブル)という今にも突進してきそうな格好をした雄牛の銅像があります。ニューヨークの観光名所の1つとなっています。