1. いま聞きたいQ&A
Q

「新値三本足(しんねさんぼんあし)」の意味と活用法を教えてください

今回はテクニカル分析に関するご質問です。「新値三本足」とは、日本に古くから伝わる罫線(けいせん)です。呼び名がたくさんあり、「三線転換」、「三本抜き新値足」、「新値三段」などとも呼ばれていますが、その内容はすべて同じです。最大の特徴は、チャートから時間の概念を一切排除している点にあります。

通常、株価のチャートは縦軸に株価、横軸に時間の経過が表されています。そのようなグラフ上に、日足なら1日1本の足(線)が描かれます。また、週足なら1週間で1本、月足なら1カ月で1本というように、時間の経過とともに新たな足が書き込まれてゆきます。普段見慣れているチャートはほとんどがこのような決まりごとで作られています。

これに対して「新値三本足」は、グラフの横軸にあたる時間というものを排除して描かれます。株価のたどった値幅だけに着目して、そこから本当の相場の動きを読み取ろうとするものです。同じような考え方のチャートに、欧米では「ポイント・アンド・フィギュア」、日本では古くから「カギ足」、「練行足(れんこうあし)」があります。

言葉で説明するとわかりにくく感じますので、まずは実際に「新値三本足」のグラフを見てみましょう。


このグラフは昨年5月上旬からの新日鉄(5401)の日足チャートと、その「新値三本足」を描いたものです。通常の日足チャートには1日ごとの値動きが1本の足(線)で示されています。1年分を描くと線の本数は約250本にもなります。これに対して「新値三本足」は、同じ期間をとっても約40本ほどの足で描かれるだけです。

「新値三本足」のチャートの作り方は次のとおりです。

  • (1) 終値を用いる
  • (2) 基準となるスタート日を決める
  • (3) 終値が前日比で上昇しているうちは、行を変えて陽線(□)を足してゆく
  • (4) 終値が3本前の陽線(□)の値段を下回った時に、行を変えて陰線(■)を描く
  • (5) 終値が前日比で下落しているうちは、行を変えて陰線(■)を足してゆく
  • (6) 終値が3本前の陰線(■)の値段を上回った時に、行を変えて陽線(□)を描く

このルールでチャートを描いてゆくと、陽線(□)か陰線(■)がそれぞれ何本も連続してゆくことになります。(3)の状態のように株価が上昇を続けている時は、何本でも陽線が連続することになり、反対に(5)の場合のように株価が下落を続けている時は、陰線が何本も続きます。直前の新値を更新している限り、上げ相場では陽線(□)、下げ相場では陰線(■)が一方向に連続して描かれます。この陽線、陰線の連続がそのまま株価のトレンド(方向性)を表しています。

トレンドの転換は、直前3本分の陽線、または陰線を抜くほどの反対方向への動きが株価に起こった場合に生じます。大切なのは(4)または(6)のように、陽線(□)から陰線(■)、あるいは陰線(■)から陽線(□)に転換する時です。何日かかってもいいのですが、直前の3本分の足を下回った(上回った)時に、チャート上では相場の流れが転換したことを示します。ここから「新値三本足」または「三線転換」という名がつけられています。

「新値三本足」の特徴として、何日間にもわたって陽線(□)も陰線(■)も書かない日が続くことがあります。むしろ何も書かない日の方が多いくらいです。陽線(□)が続いた後で、株価が前日比マイナスで終わった場合でも、少しくらいの下げでは相場の流れは転換しません。次に陽線(□)を描くのは、最後に描いた陽線(□)を上回った時(つまり新高値を抜いた時)に新しい陽線(□)を足すことができます。そして直前の3本分の陽線(□)をすべて下回るほどの下げが起こって初めて陰線(■)が描かれます。これが「時間の概念を一切除いたチャート」と言われる理由です。

陰線(■)から陽線(□)へ、あるいは陽線(□)から陰線(■)へ転換する時に、直前の連続する足が1本、または2本しかなく、ルール上でのトレンド転換にあたる3本抜きに満たない時があります。その場合でも、それまでの方向とは反対方向に新値をつけた時は転換を示したことになるため、1本だけ、2本だけを抜いた時点でチャートは転換します。この1本、2本の足は「ダマシ」と見ることができるでしょう。

このようなダマシを排除するために、トレンド転換のルールをより厳しくすることがあります。それが「新値五本足」、「新値十本足」です。これらは直前の5本分、10本分の陽線(陰線)を抜いて初めて相場が転換したと見るチャートです。どの種類の「新値足」を使ってもいいと思いますが、実戦上では「いくらまで値下がりしたら新値足は陰転するのか」、あるいは「いくらまで値上がりしたら新値足が陽転するのか」を常に把握しておくことがたいせつです。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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