1. いま聞きたいQ&A
Q

投資のリスクとリターンの関係について、どのように考えればよいですか?

リターンの「振れ幅」ではなく「ぶれ幅」がリスク

「ハイリスク・ハイリターン」と聞いて、あなたは何を思い浮かべるでしょうか。例えば1年後に、資金が最大で2倍に増える一方で、最悪の場合は10分の1に減る可能性もある。そんな損益の振れ幅が大きい投資をイメージする人も少なくないかもしれません。

1年後の結果として資金が2倍あるいは10分の1のどちらかになり、なおかつその確率がいずれも50%と等しいケースなら、確かにハイリスク・ハイリターンといえるでしょう。ただそれは、投資ではなく投機(ギャンブル)です。

投資のリスクとリターンは、考え方そのものがもっと複雑です。投資におけるリスクとは、将来的に得られるリターン(投資成果)が大小に「ぶれる」こと、あるいはその「ぶれ幅」を指します。ここで注目すべきなのは、リスクがリターンの「振れ幅」ではなく、「ぶれ幅」であるという点。ぶれ幅というからには何から“ぶれる”のか、その基準になるものが存在するはずです。

投資の世界では、まず過去の値動きなどのデータから、1年間や3年間といった一定の期間中に得られたリターンの平均値を求め、それを1年後や3年後といった将来に予想されるリターンの平均値として定めます。次に、その平均リターンから見て、過去に記録された実際のリターンがどれぐらい“ぶれて”いたかを検証し、その「ぶれ幅」についても平均値を求めます。これを標準偏差で表したものが投資のリスクにあたり、金融用語では「ボラティリティ(変動率)」と呼ばれます

つまりハイリスク・ハイリターンとは、将来的に予想(期待)される平均的なリターンの値が大きく、しかも実際に得られるリターンのぶれ幅も大きいことを意味するわけです。どの程度の大きさからがハイリスク・ハイリターンに相当するかといった定義はありません。ハイリスク・ハイリターンやローリスク・ローリターンという言葉は、あくまでも相対的な表現です。

リターンの確率分布を状況判断や投資戦略に生かす

投資のリスク(標準偏差)とリターン(平均値)の数値から、将来的なリターンがどのような範囲内に、どのような確率で収まるかという「リターンの確率分布」を求めることができます。そこでは基本的に、グラフが釣り鐘型の「正規分布」が前提となります。

例えば、ある金融商品において1年後に予想される平均リターンがプラス10%で、標準偏差が15だとします。その場合、1年後に得られるリターンの確率分布として以下のようなことが分かります。

  • ●リターンが+25%~-5%の範囲に収まる確率は68.3%
  • ●リターンが+40%~-20%の範囲に収まる確率は95.5%
  • ●リターンが+55%~-35%の範囲に収まる確率は99.7%

よほど投資に慣れている人でない限り、このようにリターンがぶれる確率を段階的に示されても、リスクとリターンの関係を具体的にイメージするのは難しいと思われます。しかしながら、実際の投資に際してこうした確率分布を頭に入れておけば、株価が思いがけず大きな下落を記録した場合などでも、必要以上に慌てずに済むかもしれません

あなたがこの金融商品に投資して、1年間で価格が40%も下落したとします。上記の確率分布に照らせば、その確率は0.3%しかありません。これだけ低い確率の出来事が起こるからには、何か相当な理由があるはずです。世界で100年に一度といわれるような金融危機などの事件が起きていたら、株価下落の主因は銘柄固有の理由にあるのではなく、外部要因による投資家のパニック売りにあるのではないかと推測できます。

マイナス40%という数字が大きいのは確かですが、大きな下落に際していつでも「損切り」が最良の策かといえば、そうとも限りません。リスクとリターンの関係も含めて当初の商品選択に落ち度がないか確認するとともに、いま市場で何が起きているのかを冷静に判断し、今後の投資戦略を改めて考えることが大切なのです

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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