1. いま聞きたいQ&A
Q

「サイコロジカルライン」の意味と活用法を教えてください

今回はテクニカル分析に関するご質問です。株式投資を行う場合にまっ先に必要になる点は、「何を買うか」と「いつ買うか」を決めることです。

「何を買うか」~つまり数ある上場企業の中から、どの銘柄に投資するのかをまず決めることが肝心です。そして「何を買うか」が決まったら、次にその銘柄を「いつ買うか」を決めることになります。

ここで「何を買うか」を判断する時に、頼りになるのがファンダメンタル分析という方法です。ファンダメンタル分析とは、その企業が経営者や社員の努力によって業績を伸ばしてゆく時に、その経営の基本となる企業の中身を吟味することです。

具体的には、(1)その企業の業績(何を作っていて、売上や利益は伸びているか)、(2)その企業が属している業界の動向(産業全体として伸びているか)、(3)会社の財務内容(借金は多すぎないか、在庫を抱えすぎていないか)、(4)経営陣の質(社長はどのような考えで経営に臨んでいるか)、などが挙げられます。これらをよく調べた上で、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)などの投資指標を使って割安な銘柄を選んでゆきます。

ファンダメンタル分析によって、投資したい銘柄をある程度絞り込むことができたら、今度は株価を見ながら「いつ買うか」という点を判断してゆきます。この時に必要になるのがテクニカル分析です。テクニカル分析は、その銘柄の株価が過去にたどってきた動きを利用して、現在の位置は高いのか安いのか、将来はどのように動くのかを判断する方法です。ご質問にある「サイコロジカルライン」は、数あるテクニカル分析の中でもよく知られた方法のひとつです。では「サイコロジカルライン」の内容を見てゆきましょう。

「サイコロジカルライン」は、立会い日数12日間のうち、その銘柄が値上がりした日の日数を数えるテクニカル指標です。「前日比変わらず」の日はカウントしません。
12日間のうちで値上がりした日が4日間なら「サイコロジカルラインは4」、値上がりした日が9日間なら「サイコロジカルラインは9」となります。

「サイコロジカルライン」を略して「サイコロ」と呼ぶこともあります。上記の例では、「サイコロ4」、「サイコロ9」となりますが、すごろくのサイコロのことではありません。これを書いている11月30日の大引けの時点で、トヨタ自動車(7203)は「サイコロ5」、NTT(9432)は「サイコロ4」です。

「サイコロジカルライン」は、その銘柄が勝ったか負けたか(値上がりしたか、しなかったか)で示すため、相撲の星取表のように表すこともあります。○印が値上がりした日、●印は値上がりしなかった日です。

トヨタ:「○○●●●●●○●○○●」(=サイコロ5)
NTT:「○○●○●●●●●○●●」(=サイコロ4)

また、12日間のうちの値上がりした日数を12で割って、パーセンテージで示すこともあります。「サイコロ4」は(4÷12=0.3333)なので33.3%、「サイコロ5」は(5÷12=0.4166)なので41.7%となります。

「サイコロジカルライン」の「サイコロジカル」とは「心理的な」という意味です。
このテクニカル指標の意味するところは、株価は何日間も連続して下がるものではない(上がるものではない)という人間の心理に基づいています。ある程度連続して値下がりしたら、投資家ならひとまずは買ってみたくなります。反対に何日間も連続して値上がりしたら、ひとまずはその株を持っている人は売ってみたくなるものです。
同じような状況がいつまでも続くものではない、という人間の飽きとか疲れのリズムに基づいて判断しようというものです。

「サイコロジカルライン」の見方としては、経験的に「サイコロ3」と「サイコロ9」にボーダーラインを置いています。株価が下げ続けて「サイコロ3」(25.0%)以下になったらボトム圏に入った判断します。反対に株価が上げ続けて「サイコロ9」(75.0%)以上になると、天井圏に近づいたと判断します。

以上は原則的な点で、次は少し実践的な内容に触れます。
先ほどのNTTの例を用いれば、NTTは過去12日間の取引で「○○●○●●●●●○●●」(=サイコロ4)となっています。ここで「仮に今日も値下がりしたら」と考えると、先頭の「○」が消えて新たに「●」が一番最後に加わります。この時、「サイコロは3」に低下します。さらにもう一日下がると二番目の「○」も消えて、代わりに「●」が入るため「サイコロは2」になります。これを図示すると次のようになります。

11月30日:「○○●○●●●●●○●●」(サイコロ4)
 ↓
12月01日:「○●○●●●●●○●●●」(サイコロ3)予想
 ↓
12月02日:「●○●●●●●○●●●●」(サイコロ2)予想

そうなるとさすがにNTTはそろそろボトムだろうという予想が、今日の時点で立ってきます。あと一日下がれば、あるいはあと二日下がれば、そろそろ反発するという予想が強まり、もう買ってもいいだろうと判断できるようになります。

反対に、NTTが過去12日間の取引で「○○●○●●●●●○●●」(=サイコロ4)になっている場合、仮に今日値上がりすると、先頭の「○」が消えて一番最後に新しく「○」が入ります。「サイコロ4」のままで変わりません。さらにもう一日値上がりしても、二番目の「○」の代わりに「○」が入るだけで、これも「サイコロ4」のままです。

11月30日:「○○●○●●●●●○●●」(サイコロ4)
 ↓
12月01日:「○●○●●●●●○●●○」(サイコロ4)予想
 ↓
12月02日:「●○●●●●●○●●○○」(サイコロ4)予想

つまり「サイコロジカルライン」を見るには、12日間という計算期間の先頭にある12日前の取引が「○」か「●」のどちらであるかが重要になってきます。あと何日間か値下がり(値上がり)したら、サイコロの数値はどのように変わってくるのか、それらを投資家は計算しながら「いつ買うか(売るか)」の判断材料に使っています。

注意点として「サイコロジカルライン」は、あくまで短期的な株価の変動に着目したものです。大きな流れの中で下げ続けている銘柄は、「サイコロ3」以下の水準でひとまず反発することはあっても、反発が終われば再び下げ続けることもよく見られます。反対に「サイコロ9」以上まで上昇した銘柄が、買い疲れ感が出ていったんは反落しても、小さな下げの後にすぐにまた上昇を続けることもあります。

「サイコロジカルライン」は、テクニカル分析の仲間の中では比較的単純なものですが、単純なだけにその使い方には奥深いものがあります。あくまで判断材料のひとつとして、実例を見ながら自分なりに慣れてゆくことが大切です。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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