1. いま聞きたいQ&A
Q

いま金が歴史的な高値にあるそうですが、その理由は?

代替通貨としての性質が脚光あびる

金価格には「国際価格」と「国内小売価格」の2種類があります。世界の金取引の基本になる国際金価格は、トロイオンス(約31.1グラム)という重量単位あたりのドル建て価格で表示されます。それをグラムあたりで円換算し、調達コストなどを加えたものが国内小売価格となります。

過去数年間にわたって国際金価格は右肩上がりの上昇を続けてきましたが、とくに最近はその上昇ピッチに拍車がかかっています。国際金価格の指標のひとつであるニューヨーク商品取引所の金先物相場は、今年(2007年)11月8日に終値としては過去最高の837.5ドルを記録。3カ月前の8月上旬から約200ドルも上昇しました。これに合わせて国内小売価格も上昇基調を強めています。10月15日に23年ぶりとなる1グラム3,000円台を記録し、11月9日には3,216円の年初来高値をつけました。

現在、金価格が歴史的な高値圏で推移している背景には、大きく分けて2つの理由が考えられます。

ひとつは、以前から金の購買意欲が強い中国やインドなどの新興国、および中東の産油国において、投資用と宝飾品用の両面から金に対する需要が拡大傾向にあること。とくにインドでは、経済成長により自国の通貨が相対的に強くなった(米ドル安・ルピー高)ことで、国際金価格が高値圏にあるにもかかわらず国内小売価格が抑えられ、人びとの購買力が強まったという側面があるようです。

もうひとつは、いま世界で急速に「米ドル離れ」が進みつつあるということ。これまで米ドルは世界の基軸通貨として高い信認を受けてきましたが、最近は主要通貨に対して下落が著しく、その信用力にかげりが見え始めています。事実、世界各国の外貨準備に占める米ドルの比率は低下傾向にあり、機関投資家の間では投資資金の一部を米ドルからユーロなど他の通貨に移す動きも目立ってきました。そんななか、どの通貨とも交換でき、実物資産でありながら「代替通貨」としての性質もあわせもつ金が、いわば一時的な米ドルからの避難先として大きな脚光を浴びているのです。

いずれは金利の影響を受けることに

こうした動きは、例のサブプライムローン問題によっていっそう顕著となりました。同問題を通じて住宅ローン担保証券に代表されるような、いわゆる証券化商品への不信はもちろん、株式や債券などの伝統的なペーパーアセット(発行体の信用力を裏づけとした紙資産)に対する疑念や、格付け会社への不信も世界中に広がりました。米国は同問題の影響による景気後退を防ぐために利下げを実施しましたが、それによって米ドルの投資対象としての魅力はさらに薄れ、なかば消去法のようなかたちで、原油と同じく実物資産である金への投資が活発化したわけです。

さて、金価格の上昇はいつまで続くのでしょうか。金は従来から、何か有事が起こった際に資産の一部を緊急避難させたり、資産全体の目減りを防ぐといった「守りの資産」としての機能が注目され、世界中の資産家や投資家から重宝がられてきました。今後、サブプライムローン問題の行く末と並んで懸念される世界的な有事は、原油や穀物の高騰に象徴されるインフレの進行具合でしょう。

ここで注意すべきなのは、金が「金利を生まない資産」であるということです。インフレ対策として各国が利上げをおこなうと、他の商品で運用する方が有利となり、相対的に金の魅力は弱まります。一方で、インフレによる物価上昇率が高い場合は、名目金利からインフレ率を引いた「実質金利」は低くなるため、金の魅力が変わらないケースも考えられます。専門家の間では、実質金利2~3%あたりが金の魅力を左右する境界線と見られているようです。

サブプライムローン問題がいつ沈静化するのか分かりませんが、いずれにしても金価格の動向は遅かれ早かれ、インフレおよび実質金利の影響を受ける局面に入るかと思われます。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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