1. いま聞きたいQ&A
Q

株式の流通性を高めると企業にどう影響するのか、教えてください

株式と一概に言っても、売り買いしやすい株としにくい株があるのをご存知ですか?
ある株を時価で買いたいと思っても、市場で売り注文がなかなか出てこないために注文が成立しないことがあります。
逆にお金が必要になって持っている株を売ろうと思っても、なかなか買い注文が入らないために売れないということもあります。この売買のしやすさのことを株式市場では「流動性」と呼びます。

では流動性の高い株とはどんな株でしょう。
一般的には発行済みの株式数が多く、しかも浮動株の比率が高いほど株式は流通しやすくなります。
浮動株というのは保有者が変わりながら市場で転々と流通している株のことです。銘柄ごとに浮動株がどの程度あるかを厳密に計算することはできませんが、大雑把に言えば、発行済み株式数から会社の創業一族や株式を持ち合いしている金融機関や取引先などが保有している安定株を除いた分が浮動株だととらえることができます。

投資家にとっては売買しやすいに越したことはありませんから、流動性が高いというのは大きなメリットになります。また、市場でたくさん流通している株は相対的に株価の変動が緩やかになるという特徴もあります。浮動株が少ない株はわずかな売買注文で大きく価格が変動することが多いのに対して、市場で売買される株が多ければ、ある程度の注文が出ても市場で吸収することができるからです。

では、企業の立場からするとどうでしょう。
まず、投資家が売買しやすい株ですから株主を増やす効果が期待できます。
例えば東京証券取引所第1部に上場するには、1単元が1000株の企業では上場株式数が1000万株未満なら800人以上の株主数が必要であるという基準があります。第1部に上場しようとする企業はこの基準を満たすために株主数を増やさなければなりません。株主づくりのために株式分割をしたり、創業一族の保有株を売り出して市場に流通する株を増やそうとするケースがよくあります。

企業にとっては流通する株が多いことがデメリットになることもあります。
固定株主が少ない分だけ、株主総会で議案成立に必要な議決権を集めることが大変になったり、敵対的な買収のターゲットになる恐れが高まるなど、経営の安定性を維持するのが難しくなるからです。

ただ、最近は銀行が保有している株を手放したり、株式を持ち合っていた企業の経営が悪化して持ち株を売却する例が増えており、従来は安定株主と見られてきた株主が必ずしも安定株主とは言えなくなっています。このため浮動株比率を積極的に高めて、個人投資家や海外の年金など外国人投資家に株主のすそ野を広げようという企業が増えています。11月26日付日本経済新聞の企業財務面では「株式売り出し相次ぐ」という記事で、旭硝子やイトーヨーカ堂、アイシン精機などが金融機関が保有する株を売り出し、持ち合い解消に伴う自社株の売りを円滑に消化するとともに株主のすそ野を広げようとしている動きを伝えています。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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