1. 先駆者たちの大地

先駆者たちの大地

日本電信電話(NTT)株式会社

2002年~ 電話のつぎへ

2002年11月25日、NTTは「“光”新世代ビジョン――ブロードバンドでレゾナントコミュニケーションの世界へ」と題する新しいビジョンを発表。レゾナントとは「響く、共鳴する」という意味で、映像を駆使した双方向高速通信で生活やビジネスのあり方そのものを変えるような新しいコミュニケーション環境を提供し、世の中と共鳴しながら進歩していく、という内容を謳っている。

新ノードシステムNS-8000シリーズ

新ノードシステムNS-8000シリーズ。
従来の交換機に代わる新ノードシステムとして1994年に導入された。音声信号とともに大容量のディジタルデータも伝送する

電話事業は、まず、遠距離でもすぐつながりすぐ話せることを目標に進んできたが、1979年にこの目標が達成されると、電話は「声を届けるもの」から「データを届けるもの」を目指し始めた。電話網はアナログからディジタルへ移行し、1997年にすべての伝送路がディジタル化された。この間、技術の進化とともにユーザーニーズも高度化し、より大きなデータを高速で送受信できる環境が求められるようになってきた。こうした要請に応えるものがブロードバンドであり、その究極に位置するものが超高速広帯域の双方向高速通信を実現する光ファイバーである。
こうした動きとともに従来の固定電話にも変化が起こり始めた。IP(インターネット・プロトコル)電話の出現である。これはデータ通信規約であるTCP/IP接続によって、音声データをパケット(小包み)に分割して伝送するもので、電話交換機に代わってルーターと呼ばれる伝送機を介して送受信が行われる。電話交換機は特注品で、価格は1台数億円から数十億円といわれ、メンテナンスのコストも老朽化の進展とともに年々膨大になる。これに対してルーターは汎用品のため価格は数百万円程度に抑えられるうえ、ユーザーにとっても魅力的な料金を実現できる。従来、長距離電話は中継交換機を経由するごとに料金が加算されていたが、IP電話は交換機を介さないため、長距離でも市内通話と変わらない料金で利用できるからだ。

光ファイバーケーブル

超高速広帯域の双方向通信を可能にする光ファイバーケーブル。
メタルに代わって次世代の通信インフラを構築する

音声通信から大容量のデータ通信へ。固定電話はIP電話へ。こうした変化によって、114年間、人の声を伝え続けてきた電話交換機は、次世代の技術にその役割を譲ろうとしている。ただし、長い歴史を積み重ねてきた従来の電話網と同等レベルの品質や信頼性を備えたIPネットワークを構築することは決して容易なことではない。現行のIPネットワークにはまだまだ電話網にはかなわない面がある。
NTTグループは、次の一歩をどこへ踏み出そうとしているのか。その答えが光によって構築されるフルIPのブロードバンド・ネットワークであり、それによって実現されるレゾナントコミュニケーション環境である。音声通信が社会を変えてきたように、新たな通信インフラが社会をどのように変えていくのか、もうすぐその全貌が見えてくる。

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IRマガジン2004秋号 Vol.67 野村インベスター・リレーションズ

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