13 イスラム諸国の独特な金融のしくみ
お金は、モノとモノとの交換を仲立ちする役割や、価値を蓄えておく役割があります。しかし、そうした役割を超えて、お金は人々の心にもさまざまな影響を与えます。お金が私たちを豊かな気持ちにさせてくれることもありますし、もめ事や争い事の原因になることもあります。みなさんはお金に対してどんなイメージを持っているでしょうか?
お金は昔から、信仰心と密接な関係があったと言われています。お金のことを英語で「マネー(money)」といいますが、これは古代ローマの女神の名前「ユノ・モネタ」に由来します。豊饒と繁栄を意味するこの女神の神殿に最初の造幣所をつくられたことで、マネーという言葉が生まれたそうです。
「世界で最初の硬貨とは?」で、アテネの女神を表すフクロウ(ミネルバのフクロウ)が刻印されていたとお話ししましたが、これもお金に対する信仰心を表していたのかもしれません。日本でも神社やお寺にお参りするときに「お賽銭」としてお金を奉納する風習がありますが、この場合のお金は神さまや仏さまへの供え物という意味があります。
一方で、中世ヨーロッパのキリスト教の国々では、お金を貸し借りして利息をとることは悪いことだと考えられていました。そのため当時のヨーロッパで金融業を営んでいた人の多くは、職業などの面で迫害されてしまっていたユダヤ人の人たちでした。シェークスピアの「ベニスの商人」という有名な戯曲に、悲劇的な悪役としてシャイロックという高利貸しが出てきますが、このシャイロックもユダヤ人という設定でした。
やがて、金融が世の中で果たす役割がどんどん大きくなるにつれて、ユダヤ人の人たちが営む金融業者は巨大な金融グループへと成長していくことになります。世界最大の金融財閥であるイギリスのロスチャイルドなどはその例です。
お金に対するイメージは、国によっても時代によっても違います。そのことは、その後の金融業などにもさまざまな影響を与えていったわけです。