2006年5月に、従来の商法、有限会社法、商法特例法などが再編され、新しい会社法が施行されました。会社法は、会社のあり方や株主の権利など企業に関する基本ルールを定めた重要な法律です。今回の改正では、表記がカタカナからひらがなになり口語体になったほか、企業を取り巻く環境の変化に合わせて内容を一新し、21世紀にふさわしい会社の基本法となっています。
今回の改正の背景にあるのは、経済のグローバル化です。冷戦終結後、世界が一つの市場に統合される流れが強まり、企業は国際競争に生き残るために、変化に柔軟に対応できる規制緩和を求めてきました。純粋持ち株会社が解禁され、会社分割などが可能となるなど、1990年代以降は、激変する企業環境の中で、商法は何度も改正を重ねてきました。これら相次ぐ法改正を集大成したのが新しい会社法です。
新会社法は「定款自治」の拡大を基調としています。「定款」とは、会社の目的、組織などを規定する基本原則で株主総会によって定めています。この定款を、株主総会の承認を得て機動的に変更することによって、経営者が幅広い裁量権を得ることが、今回の会社法の大きな特徴です。
自由度の高い裁量権の代わりに、経営者は自己責任を厳しく問われます。会社法は、資本金5億円以上または負債200億円以上の大会社に「内部統制システム」の構築を義務づけています。経営者や取締役、従業員が法令や定款を守ってきちんと仕事をしているか、企業が自らチェックするシステムとなっています。経営者は、どのような戦略の下に企業価値を高めていくのか、市場に向かって明確に説明し、それを実行しなければなりません。拡大する自由裁量をチャンスとして生かせるかどうかは、経営者の能力が左右するといっても過言ではありません。
具体的には、株式会社と有限会社の統合、最低資本金制度の廃止、株式制度の整理などが図られました。ベンチャービジネスから上場企業まで、それぞれ身の丈に合った会社をつくり運営できるように多様な選択肢を設けました。
また、取締役の機動的な権限拡大という点では、剰余金の分配権限を取締役会に移し、配当を柔軟にできるようにしたり、取締役会決議を電子メールや書面の持ち回りでできるようになりました。役員が海外出張中でも、M&A(企業の合併・買収)案件などが緊急に浮上したときに機動的な対応が可能になります。
経営者にとってM&A(企業の合併・買収)の選択肢が攻守両面で広がりました。攻める側では一年後ですが、子会社を使った株式交換による買収、いわゆる三角合併が解禁になりました。守る側では敵対的買収への防衛策が法的に導入しやすくなりました。
以上ご紹介したのは、会社法改正のほんの一部ですが、これら改正を企業価値向上に利用できるかどうかは、まさに経営者の手腕によります。それゆえ、私たちステークホルダーも厳しい目で企業活動を監視していかなければなりません。