1. いま聞きたいQ&A
Q

証券仲介業とは何ですか? 銀行で株式が買えるようになるってほんとですか?

銀行の窓口で株式の売買注文を出すことができるようになる、という話を聞いたことがありますか?日本では法律(証券取引法65条)の決まりで、銀行や信託銀行は株式の売買注文を取り次いだり、企業が発行する株式を引き受けたりする証券業務が禁じられてきました。ところが昨年12月に金融庁の諮問機関である金融審議会は、銀行に「証券仲介業」を解禁し、銀行の窓口でも株式を売買できるよう、この法律を見直すことを決めました。今度の国会で法改正が議論されることになっており、いずれは銀行の店頭で株式を売り買いできるようになる見通しです。

ここで出てくる証券仲介業とはどのようなものでしょう。昨年5月の証券取引法の改正で認められ今年4月にスタートする制度で、個人や法人が証券会社の代理店のように証券会社と委託契約を結び、株式や投資信託などの売買を取り次ぐものです。証券会社以外にも株式などの販売窓口を広げ、個人投資家のすそ野を広げることが導入の狙いです。

証券仲介業の具体的な仕組みを説明しましょう。仲介業者は日本証券業協会の証券外務員資格を取得した担当者を通じて、契約を結んだ証券会社が売っている投資信託を販売したり、その証券会社に株式売買の注文を取り次ぐことができます。証券仲介業を始めやすいように、参入業者は登録制としているほか、事故などで顧客が損害を被った場合には仲介業者ではなく証券会社が責任を負うことになっています。個人の資産運用を助言するファイナンシャルプランナーや、中小企業の経営者など資産家を顧客とする税理士、公認会計士などの参入を想定しており、一部の証券会社はこうした人々のネットワーク化に熱心に取り組んでいます。この証券仲介業を利用すれば、スーパーやコンビニエンスストアなど幅広い場所で株式売買の注文を出せるようになります。

もっとも、この制度がどこまで活用されるかは未知数です。投資信託の拡販などには有効な面があるかもしれませんが、インターネットを利用した株式売買が普及している現在、一般の個人投資家がわざわざ税理士やコンビニなどを介して株の注文を出すか疑問視する見方もあります。株式という価格変動リスクの大きな金融商品の販売に、銀行がどれだけ対応できるかもわからず、大手銀行の間でもこの業務に前向きな銀行と消極的な銀行に分かれています。

そもそも証券仲介業の制度がスタートした背景には、これまで株式売買の仲介を一手に担ってきた証券会社に対する、金融庁の根深い不信感があると言われます。しかし日本で株式投資のすそ野がなかなか広がらなかった理由は、不十分な税制の手当てや株主への利益配分に消極的だった企業の姿勢、市場監視機能の不十分さなど様々あり、単に販売窓口を広げれば一気に株式投資が活発になるというものではないでしょう。証券市場の健全な拡大・発展のためには、税制優遇や市場監視機能の見直し、証券教育の普及など地道な努力を続けることが必要です。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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