企業は決算をまとめる際、これまでは所有している株式、社債、不動産などの資産を「買った時の値段」(取得原価、帳簿上の価格なので簿価とも呼ばれます)で評価していました。こうした資産の価格が大きく変動しても決算上では、儲けも損失も出ていなかったのです。
ですから、バブルが盛んな時などは「あの企業は大きな含み益を抱えている」ことで株式が買われ、株価が高くなる現象がよく生じました。しかし、最近では逆に、「あの企業は膨大な含み損を抱えていて、決算数字が真実を示していない」とささやかれるようになっています。
時価会計とはこうした資産を時価(決算期末時点に流通市場で付いた価格)で評価し、企業の決算に正確に反映させる方法です。投資家に企業の真の姿を示そうというわけで、時価評価会計の導入は国際的な流れになっています。
予定されている時価会計の導入時期は評価対象の資産の種類によって異なります。
2001年3月期からはデリバティブ(金融派生商品)や売買目的で保有している有価証券を時価で評価し、2002年3月期からは企業同士の持ち合い株式などにも適用されます。2001年3月期には販売用不動産も時価で評価されます。
資産価格の変動が決算数字に響いてくるのですから、企業の間では、慣習でお付き合い的に保有したり投資していた株式を売却し、優良な株式に乗りかえようとする動きが出てきています。実際、そうした動きは始まっています。
また、「いつかは地価が上昇して儲かる」と長年、持ち続けてきた不動産の処分を急がなければならない会社も出てきそうです。
こうした動きが最近の株価の低迷、長引く地価下落などに影響を与えていることは間違いなさそうです。市場では、金融商品や不動産を多く抱える銀行や生保などの今後の動きにとりわけ強い関心が集まっています。