「骨太方針」の正式名称は、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」です。2001年1月の諮問会議で、当時の森喜朗首相が「重要な課題として”骨太”の政策を明確にすることが必要」と提言したことにより誕生しました。
「骨太方針」は政府の経済財政運営の指針で、毎年、次年度の予算編成作業が本格化する前の夏に策定します。首相自ら議長を務める「経済財政諮問会議」が司令塔となり、様々の方針を決定します。小泉政権のもとでは、「官から民へ」「国から地方へ」を旗印に、その方向性を示してきました。
<これまでの骨太方針が示した主な政策課題>
2001年 | 郵政民営化、不良債権処理の抜本的解決 |
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2002年 | 広く、薄く、簡素な税制の構築 |
2003年 | デフレの克服、三位一体改革の実現 |
2004年 | 社会保障制度の総合的改革、市場化テストの導入 |
2005年 | 小さくて効率的な政府の実現(政策金融改革、公務員人件費改革など) |
今年の「骨太方針2006」は2006年7月7日に閣議で決定しました。小泉首相最後のもので、中期的な財政改革の方向を示しました。
<骨太方針2006のポイント>
1.財政健全化への取り組み
- ■2段階の目標を提示
・2011年度:国と地方の基礎的財政収支を黒字化(名目経済成長率3%程度が前提)
・2010年代半ば:国と地方の債務残高GDP比を安定的に引き下げ - ■来年度からの5年の歳出削減
・総額11.4兆円~14.3兆円を削減 - ■歳入改革の必要性に言及
2.経済成長力・競争力強化戦略
- ■次世代産業創出の行動計画を今年度策定
- ■アジア諸国を中心に経済連携協定(EPA)交渉を推進
3.安全・安心の確保と多様な社会の実現
- ■若年者の雇用不安解消などを目指す
「再チャレンジ支援策」
今年の「骨太方針」で特徴的なことは、中期的な財政再建の道筋を示した国の中期経営計画ともいえる改革目標を盛り込んだことです。分野別に歳出削減目標を示すなどある程度前進したようにも見えますが、具体策はあいまいで、改革の詳細はポスト小泉政権に先送りされました。
「財政改革と経済成長は車の両輪」との考えのもと、今年の「骨太方針」は、単なる財政の収支均衡策ではなく、経済成長を土台にした、企業の国際競争力強化に向けた成長戦略を打ち出し、政府がそれを支援する絵を描きました。成長によって税収が増えれば、それだけ財政再建に寄与するとの考えが背景にあります。
ここでも、具体性に欠く項目が多くなっていますが、「成長なくして健全化なし」との方向を鮮明にしています。
とはいえ、成長なく景気が後退した場合は歳出削減策を見直す「弾力条項」も盛り込んでいます。安易に乱用される懸念は残りますが、基本的には景気動向に応じて柔軟に対応できるような方針となっています。
一方で課題もたくさんあります。成長の大きなの壁となっている少子化問題対策については、「抜本的な拡充、強化、転換を図る」としていますが、盛り込んだメニューは小さなものばかりでした。財源調整も遅れ、予算規模も明記できませんでした。経済活動の足かせとなる規制の撤廃・緩和については、年度末に期限が来る規制改革・民間開放推進会議の後継組織が決まらず、将来に課題を残しました。
消費増税抑制に向け、成長による税収増が方針どおり進むでしょうか――。ポスト小泉政権の施策をきっちり監視していきましょう。