1. 先駆者たちの大地

先駆者たちの大地

三井不動産株式会社 社長 江戸英雄

1914~1941年 三井家の家産を守るために

家方式目

家方式目(左は表紙/三井文庫所蔵)

三井不動産株式会社の創立は、1941年、太平洋戦争が始まった年のことである。比較的新しい会社だが、その前史は、18世紀初頭、三井家が一族の所有する不動産を管理する機関として設置した「家方(いえかた)」にさかのぼる。三井財閥の開祖、三井八郎兵衛高利は江戸本町の越後屋呉服店に続いて為替両替業でも成功を収めていたが、幕府の公用為替を引き受けるため、その担保物件となる大量の不動産を買収していた。

三井本館

三井グループ発祥の地、東京・日本橋室町に三井グループのヘッドクォーターとして1929年に落成した三井本館

そして高利の没後、これらの不動産を管理するために設置されたのが「家方」である。その後、三井銀行、三井物産、三井鉱山などの設立を経て、1909年(明治42年)、これら三井の事業を統括する持株会社として三井合名会社が設立され、1914年(大正3年)、所有する土地・建物の管理運営のために不動産課が新設された。この三井合名会社不動産課こそ、実質上、現在の三井不動産の前身なのである。
1937年、日中戦争が勃発し日本は戦時体制に突入した。そうした戦時下という膨大な資金需要と相次ぐ家督相続の納税資金を調達するためには、合名会社という閉鎖的な組織では対応しきれず、三井合名は1940年、子会社である三井物産に吸収合併され、株式組織化が図られることとなった。
そして三井物産の株式公開にあたって、三井家固有の家産ともいうべき不動産を守るために、1941年7月15日、三井不動産株式会社が設立されたのである。

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IRマガジン2002年5-6月号 Vol.55 野村インベスター・リレーションズ

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