お金の歴史雑学コラム

19 布製のお札、陶器の硬貨…世界のお金の素材いろいろ

発行されずに終わった幻の「陶器のお金」

一般に「お札」というと紙でできたお金(=紙幣)を思い浮かべますが、世界各国の歴史を見渡すと、紙以外の材料でお札がつくられた例がいくつも見られます。

まず有名なのが、1933年に中国で作られた「布製」のお札。当時の中国国内は、「国民党」と「共産党」という2つの勢力が政治的に対立していた時期にあたり、このお札は共産党の支配地区で発行されたもの(工農銀行券)でした。戦争や政治的紛争などにより国内が混乱状態にあると、お札を作るための質の良い紙が手に入らないケースがあります。中国で布製のお札が作られたのもそのためでした。
その他、ドイツでは1920年代に革製のお札が、チベットでは1940年代に藁(わら)でできたお札が発行された例があります。

硬貨は金属製のものがほとんどですが、じつは日本で第二次大戦中に、大変珍しい素材の硬貨が作られたことがあるのです。なんと「陶器」の硬貨です。

陶貨幣(10銭)

陶貨幣(10銭)
(写真出所:造幣局HP)

戦争の軍備のためにさまざまな金属が使われるようになり、戦争末期にはお金をつくるための金属が枯渇してしまいました。そこで、焼き物業の盛んな瀬戸市(愛知県)、有田市(佐賀県)などの工場に依頼して、粘土を焼いて陶器の硬貨を作ろうとしたのです。
実際、1945年7月からは量産を開始し、約1500万枚が作られました。しかしその直後に終戦を迎えたため、実際に発行されることのないまま、粉砕破棄されたのだそうです。まさに「幻のお金」です。

※参考文献
『お札の文化史』(NTT出版)
『これだけは知っておきたい(14) お金の大常識』(ポプラ社)
『お金100のひみつ』(学研)
国立印刷局HP資料

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