お金の歴史雑学コラム

18 お札の肖像に登場した女性たち

お札にヒゲを生やした男性が多い理由とは?

お札に肖像画を用いている例は世界各国に見られますが、その人物の性別を見ると、現状では女性よりも男性のほうが多いようです。

例えば、現在米国で発行されている紙幣は1ドルから100ドルまで7種類ありますが、ジョージ・ワシントンやエイブラハム・リンカーンをはじめ肖像画はすべて男性です。
日本では、これまで計20人の肖像画が使われてきましたが、そのうち女性は3人。明治時代に神功皇后(じんぐうこうごう)の肖像がお札(政府紙幣)に採用されたのと、2004年11月に発行された5000円札に樋口一葉(ひぐちいちよう)、2024年7月に発行された5000円札に津田梅子(つだうめこ)の肖像が使われているだけで、ほかはみんな男性です。

改造紙幣

左:女性の肖像が描かれた改造紙幣 壱円券(1881年)
右:ヒゲを生やした男性の肖像が描かれた改造百円券 (1891年)
(写真出所:国立印刷局)

この背景には、欧米ほか各国において女性の社会進出が大きく制約されていたという古い時代状況もありますが、それだけでなく、お札独特の事情もあったようです。
もともとお札に肖像画を使うのは、私たち人間の「顔」を認識する能力を利用して偽造を防ぐ狙いがあります(「お札に肖像画が使われているのはなぜ?」を参照)。そのため紙幣に使う肖像画には、顔の部分にシワやヒゲなどの要素が多い年配の男性がふさわしかったのです。ヒゲをたくわえた男性が多く選ばれているのもそのためです。

また紙幣では、顔の細かな凹凸を表現するために多くの画線を用いるため、女性の肖像を美しく印刷するのが技術的に難しかったという要因もあったようです。
現在は、印刷技術や偽造防止技術もかつてに比べて飛躍的に高まっており、紙幣に女性の肖像画を用いる例も増えているようです。