お金の歴史雑学コラム

10 世界で最初の紙幣は中国で生まれた

ヨーロッパより数百年も前に生まれた中国の「お札」

「元の初代皇帝フビライ・ハーンは、最高の錬金術師だ」
東洋の文化をヨーロッパに伝えたことで知られるイタリアの旅行家マルコ・ポーロは、『東方見聞録』という本の中で、このように記していたそうです。
彼が中国を訪れたのは13世紀ですが、この頃はヨーロッパには紙幣がまだ存在していませんでした。そんな時代に、中国ではごく普通に紙切れがお金として使われていたので、大変驚いたのでしょう。「中国の皇帝は紙をお金に換えてしまう。まるで錬金術師のようだ」……と表現したわけです。

北宋時代の中国

北宋時代の中国

世界で最初の本格的な紙幣は、10世紀の中国(北宋時代)で作られた「交子」だといわれています。今では当たり前に使われている紙幣ですが、紙幣をつくるためにはそもそも「紙」を作る技術と、大量の紙に文字や絵柄を記していく印刷技術が必要です。製紙技術も印刷技術も中国で発明されたものですから、世界で最初のお札が中国で生まれたのも自然の流れでした。

ちなみに紙を発明したのは蔡倫という人でした。西暦105年頃、樹皮・麻くず・魚網などを水に溶かし、これをすいて紙を作ったのです。紙を作る技術は当時は大変貴重だったので、なかなか海外には伝えられなかったそうです。そのため、中国以外の国で紙幣が作られるようになったのもずっと後でした。ヨーロッパで最初の紙幣は15世紀後半になってからですし(1483年のスペイン)、日本で「山田羽書(やまだはがき)」と呼ばれる紙幣が作られるようになるのは1600年頃になってからです(日本で最初の「お札」とは?を参照)。