お金の歴史雑学コラム

10 世界で最初の紙幣は中国で生まれた

紙幣自体に記されていた「ニセ札を作ったら死刑!」の警告文

中国で「交子」というお札が作られたのは、地理的には現在の「四川省」にあたります。
この地域は商業は盛んでしたが、当時硬貨の素材として一般的に用いられていた銅が産出されないので、鉄製の硬貨(鉄銭)が使われていました。ただ、鉄のお金は重くて持ち運びに不便で、しかもサビやすいので金属としての価値も低く、不人気だったようです。そこで、これに代わる便利なお金として紙幣が考案されたのでした。
この「交子」は初めのうちは商人たちによって私的に作られたものでしたが、次第に国による発行へと移っていきます。

当時の中国の紙幣の大きな特徴は、紙幣自体に「ニセ札作り禁止」の警告文が印刷されていたことでした。ニセ札作りの罪は大変重く、犯人は死刑。逆に犯人を見つけた人には賞金のほかに犯人の財産も与えると定められており、そのことを紙幣自体に明記することでニセ札を防ごうとしたのです。(紙幣に偽造禁止の警告文を記しておく方法は、その後ヨーロッパでも広く用いられるようになっています。)このほか、紙幣に使われる紙の製造を国が独占したり、絵柄に複雑な文様を用いるなど、ニセ札を防ぐさまざまなアイディアがこの頃から取り入れられていました。

大明通行宝鈔

「大明通行宝鈔」
(資料出所:国立印刷局)

ちなみに右の写真は、1375年に中国(明の時代)に作られた世界最大の紙幣「大明通行宝鈔(だいみんつうこうほうしょう)」。タテ338ミリ、ヨコ220ミリで、だいたいA4サイズぐらいの大きさです。この紙幣にも偽造禁止の警告文が印刷されています。

※参考文献
『お札の博物館』(双葉社)
『お札の文化史』(NTT出版)